無罪放免
これまでのあらすじを三行で纏めたもの↓
エレン:グリオラを滅ぼすも魔力欠乏症で気絶→地下牢獄に幽閉され、終審裁判の審判待ち。
鳳凰の間で終審裁判スタート、エレンの極刑が決まる寸前でヘルメス登場。
ヘルメスの巧みな話術・金にモノを言わせた交渉術・汚い盤外戦術によって、エレンの無罪確定。
■殲滅部隊の隊長
ルーク:ルール遵守の眼鏡。
カステラ:ヘルメス怖いヘルメス怖いヘルメス怖い。
ピノ:お金大好き。
フォレスタ:脳内に直接語り掛けてくる謎の人物。
バン:根性バカ、エレンは友達。
名前のない老紳士:あくまで公平中立、終審裁判を取り仕切る。
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魔術教会総本部の最下層『禁者の間』、
(……誰か来る。それもけっこうな人数だ)
封印術式で編まれた立方体の中で、三角座りをしながらバンの帰りを待つエレン。
彼が視線だけをツッと上にあげたそのとき――暗がりの奥から、クラウンメイクが現れた。
「――やぁエレン、元気にしていたかい?」
「へ、ヘルメスさん!?」
予期せぬ訪問者に対し、エレンはびっくりして立ち上がる。
それと同時、ヘルメスの背後からたくさんの魔術師が顔を出した。
前から順番にバン・ルーク・ピノ・カステラ・フォレスタ、終審裁判に出席していた、殲滅部隊の面々だ。
彼らはエレンを見るや否や、
「おっす! 戻ったぞ、エレン!」
バンはニカッと微笑み、
「ふん……薄汚い魔眼使いめ」
ルークは侮蔑の視線を向け、
「キミのおかげで儲かった、ありがとう」
ピノは感謝の意を示し、
「な、なんか……思っていたより普通というか、優しそうな方ですね……」
カステラは意外そうにつぶやき、
「……(本当に普通の子のように見えるね。彼が史上最悪の魔眼を宿しているなんて、とてもそんな風には思えないよ)」
フォレスタはそれに同意した。
「え、えーっと……」
突然の大所帯にエレンが困惑していると、ヘルメスが一歩前に踏み出した。
「まったく、いろいろと災難だったね。こんな陰気くさい場所とは、さっさとおさらばして、温かい我が家へ帰ろう」
ヘルメスが隣に目配せをすると、老紳士は慇懃な態度でお辞儀をし、エレンを中心に張られた立方体の封印術式を解除する。
「――魔術師エレン殿、厳正なる終審裁判の結果、貴殿には無罪判決が下りました。後日、正式な書状が魔術教会から送られますので、中身の確認をお願いいたします」
事務連絡を済ませた老紳士はペコリと一礼し、禁者の間から退出した。
とにもかくにも、危機的場を脱したエレンは、申し訳なさそうにヘルメスの顔を見上げる。
「あの、ヘルメスさん……」
「ん、なんだい?」
「……約束を守れなくて、すみませんでした……っ」
エレンはヘルメスと『魔眼については秘密にする』という約束を結んでいた。
しかし今回、公衆の面前で魔眼を顕わにしてしまった。
状況が状況だったとはいえ、約束を破ったことに違いはない。
それを本当に申し訳なく思ったエレンは、言い訳を並べることなく、素直に謝罪の言葉を口にしたのだ。
真摯な謝罪を受けたヘルメスは、柔らかく微笑む。
「謝る必要なんてないさ。エレンはみんなのためにとても勇気のある決断をしたんだ。それに、あんな状況になったら、ボクだってそうしただろうしね。だから、気に病まなくても大丈夫だよ」
彼はそう言って、エレンの頭を優しく撫ぜた。
「あ、ありがとうございます!」
「うん。……まぁでも、この先ちょっと面倒なことになると思うから、それについてはまた帰ってから話そう」
そうして会話が一段落したところで、バンがズンズンと二人の間に乗り込んだ。
「よぉ、エレン! 俺の言った通り、無罪になっただろう?」
「はい、バンさんもありがとうございました」
「へへっ、いいってことよ!」
グッと親指を立てるバンへ、ピノは冷ややかな視線を向けた。
「バン、何の役にも立ってなかったよ」
「お、おいピノ、こらてめぇ……!」
激昂するバンを華麗にスルーした彼女は、エレンの周囲をグルリと回り、彼のにおいをくんくんと嗅ぎ出した。
「えっと……あの……?」
困惑するエレンに対し、ピノは真剣な目を向ける。
「…………エレンからは、お金のにおいがする。何かあったら、ここに連絡ちょうだい」
「は、はぁ……わかりました」
とある住所が記されたメモ書きを渡されたエレンは、わけもわからず頷いた。
ひとまず『エレンのお披露目会』が終わったと判断したヘルメスは、パンパンと手を打ち鳴らし、全員の注目を集める。
「それじゃ念のため、もう一度紹介しておこう。この子の名前はエレン・
優しく冷たく棘のある声色が響き、周囲に強い緊張が走った。
「下種め、見え透いた脅しを……っ」
ルークは虫唾が走るとばかりに眉を歪ませ、
「エレンとはいい関係を築きたい」
ピノは含みのある笑みを浮かべ、
「ひぃ……っ。絶対に関わりませんし、何があっても近寄りませんし、決して同じ空気も吸いません……ッ」
カステラは涙目のままコクコクと頷き、
「……(今度はどんな悪巧みをしているのかな)」
フォレスタは警戒を滲ませ、
「はっ、てめぇに言われなくても、俺たちゃもう
一人何も理解していないバンだけが、満面の笑みでエレンの背中をバシバシと叩いた。
「さて、と……。それじゃエレン、帰ろうか?」
「はい!」
こうして史上初の終審裁判における無罪判決を勝ち取ったエレンは、ヘルメスの屋敷へ戻るのだった。
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【※とても大切なお知らせ!】
なんと本日、2年ぶりの『新連載』をはじめました!
ジャンルは本作と同じ、『最強ファンタジー』!
■断罪された転生聖女は、悪役令嬢の道を行く!~聖女のいない世界線、後悔したってもう遅い~
■https://kakuyomu.jp/works/16817330660438132498
タイトルに『悪役令嬢』と入っていますが、完全に男性読者向けの作品なので、絶対に面白いと思うので、ぜひ『第一話』だけでも読んでみてください! どうか何卒お願いします……っ。
魔眼無双の最強賢者~チートな瞳力で世界最速の成り上がり~ 月島秀一 @Tsukishima
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