第22話 今川の血
浜松に戻った忠次は、信長の意向を家康に伝えた。家康は驚愕するがすべて後の祭りであった。しかし、築山殿と信康は家康の正室と嫡男である。仮にも大名が、よその大名にそんな命令をされと嫡男と正室を処分することはあり得なかった。家臣を守るのが、主人の最低の義務なのが戦国時代である。嫡男と正室すら守らない主人は大丈夫なのか。
また問題がしょうじなかったとしても体面は悪く、家臣からも軽蔑されて侮られる。こんな命令は、侮辱でしかなく大名どおしどころか家来にすらも命令するのは反乱が起こる覚悟のよっぽどな事案であった。家康としても、このような命令を簡単にうける訳にはいかなかった。
だが信長の支援なくしては、遠江はおろか三河一国さえ維持困難な状況では信長の意向は無視できなかった。それに家康は、信康を自分の後継者として軍略的にも見るべきことがあり期待していた。そして、それ以上に息子として愛していた。
家康は、信康の処分をどうするか家臣に聞くことにした。信康傅役の平岩親吉は
「信康さまは幼いころから私はいつもお側にいてお育ていたしました。全ては私の責任です。私がかわりに切腹いたしますので若君の命はどうかお助けください」
と懇願した。今川人質時代に一緒にいた石川数正、天野康影も同じ意見だった。しかし、酒井忠次は違っていた。彼は、信長に事件の片棒を担がされていた。信康の代になれば、自分は処分されるだろう。若君の嫁は、信長の娘で生かせておいては爆弾を背負っている生活しているに等しかった。
彼は三河衆らに信長の意向を話し、若君の排除の利を説いた。三河武士は、信康の武略は認めていた。信長の独裁的な支配体制は歓迎しなかった。信康は、その信長を真似ている。泥臭い三河衆は、それを恐れ警戒していた。しかも若君は、虐げてきた今川の血が半分混ざっている。
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