第19話 信長の策略

お琴は、これをすぐさま徳姫の侍女をつとめている妹に告げた。妹は、徳姫に知らせた。徳姫は、築山殿を内々に探らせていた。

しかし、この内容はあまりに疑うことが多かった。そもそも武田家はすでに斜陽であり、こんなことはできないのは誰もが知っている。築山殿が知らないはずがなかった。当時は、戦国時代である。敵は多くの謀略、流言は流すのが常だった。このようなことは日常茶飯事で、ほとんどが敵が仲間割れや疑心暗鬼を狙って流す姑息な陰謀や流言のたぐいで問題外なものだった。そもそもこんな簡単に見つかる場所に大切な書簡を置く訳はなく、岡崎の人間なら誰もが信じないものだった。

徳姫も、これは信じなかった。しかし、徳姫はこれを利用しようと考えた。彼女は、これで信康と築山殿の仲をさこうとした。彼女は、信長にデタラメな情報を元に過激な内容の文を送った。これほど自分は怒っている。父信長から築山母子を叱る手紙を送り返してほしい。

これ十二ヵ条は、定期的な文の本文でなくただ父への甘えで書いたもので付録のようなものだった。そもそもこの文章は、私的なもので公的な形式ではなかった。

しかし、信長はこの十二ヵ条を読んでよしとうなずいた。信長は、子供への愛情が薄かった。信長最愛の女性、吉乃との子の名前が長男奇妙丸、次男茶筅丸、長女五徳と名付け、茶筅丸を敵の養子に出し敵攻略の道具に使うなど子供を策略の駒に等しく扱った。

織田家のお家騒動の種は、早く摘まねばならない。彼は、子供を犠牲にしてでも作戦ができる男だった。信長は酒井忠次に良馬を買い求めるよう勧め、それを家康に報告するように指示をした。

そして自身は、家康に自分の愛馬が死にどこかにいい良馬がいないかいう手紙を送った。

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