第16話 警戒する信長
父家康も、時おり色々な豪華なものを送ってくれる。しかし、信長から送られてくるものはそれ以上に麗しい薫りが漂いそうな洗練されたものだと信康は感じていた。そして、徳姫自身も美しい着物を着ていた。彼は田舎くさい三河の中で、都人の装いと気品をかもし出す彼女が自慢だった。
彼女の父は、織田信長である。彼は、義父の信長と何度か会ったことがある。信長は、今や日本においては天下人であった。
しかし、信長はそれでも偉そうにふるまわず自然体で娘婿として信康と接した。ファッションセンスもよく、南蛮鎧を見た時はかっこよすぎてどこで手に入るか後で調べさせたほどだった。天正四年に完成する総石垣瓦葺の豪華なことで噂となっている安土城も早くこの眼でみたいと信康は思っていた。
信康にとって、信長は憧れの武将だった。彼はいつかは信長のようになりたいと思い、さかんに信長の話を徳姫だけでなく多くの人から聞き、くわしく研究していた。お気に入りの近習と毎日武芸に励んでいるのも信長の若い時の真似だった。彼は自分を鍛えるのも貪欲で、体も大きく筋肉も人並み以上につけていた。
徳姫は、そんな夫が頼もしく父に認めてもらえるように父に手紙を送っていた。
しかし、その手紙を読んだ信長は信康を警戒しはじめた。
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