第15話 信長からのプレゼント

茶会を開いても数人しかこず、家臣の妻や娘たちと京の香合わせをしようと万端打ち合わせおいたのに、その日になると何か言い立てて誰も来なかったり三河衆は築山殿の姿を見かけるとサッと陰へ隠れるようになっていた。

信康は、それも気に入らなかった。

「母を軽んずるものはわしを軽んずると一緒だ。やつらは気にくわん」

「何を聞かされたかは知りませんが母はどうでもいいのです。母は今川家の人間、三河武士が母を嫌おておるのは仕方がないのです」

築山殿は、そう言って彼らをかばった

「あなたは徳川の次期当主なのです。母は大丈夫ですからあなたは母を気にせず堂々としてくれているほうが母はうれしいのです」

「心ではわかっているのですが父のようにニコニコできぬ。あのものたちを見るとどうしてもイライラしてしまうのじゃ」

「そなたはまだ若い。苦労されてきたお父上とは違うので当然です」

築山殿は、いつも優しく信康に接した。信康は、母にしか愚痴をこぼす相手がいなかった。

「ありがとうござる母上、少し元気がでてきました。

またおじゃましていいですか」

「いつでもきなさい。待ってますよ」

築山殿は、信康を見えなくなるまで見送った。彼女にとっても、信康の来訪は嬉しかった。

母子はたびたび会い、仲良く話していた。その後信康は、お気入りの近習と夕方まで武芸の訓練をした。夕刻信康は妻徳姫の居所に帰ってきた。

「ただいま帰りました」

「おかえりなさいませ」

こういって、徳姫は玄関まで出迎えた。出迎えた徳姫は、さっそく福姫の歯が二本はえたと、今日一日におきた出来事を信康に話しかけてきた。長女熊姫より福姫のほうが早くはえた。福姫は食いしん坊さんだとか妻徳姫のたわいのない話に信康は幸せを感じていた。彼は、妻と娘二人を愛していた。

「そうそう今日は父(信長)から熊姫に着物が届きました」

と徳姫はこういって、お洒落な着物をみせた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る