第11話 解放された三河
「若様はまだ家臣の統制がまだ未熟じゃ。そもそも家康自体が十六年も三河を留守にしておってなん家康でさえまだ完全に統率できていないのに同然じゃ。しかしこのままでは三河は分裂して大変なことになるのではないか。今は三河の武士一人一人をよく知っているものが三河を采配するのがよいのではないか」
「しかしそうなると若君はどうなるのでございまするか」
「若君は岡崎城主として変わらずこれからも我々を見守ってもらいまする。そして若様はもう少し三河武士のことなどを訓育してから三河を采配いただいても遅くはあるまい」
「しかし若君のプライドは傷つきやしませんか」
「私がいって聞かせましょう。家康にもたのんでみよう。家康の空手形で信康が憎まれては信康がかわいそうじゃ。三奉行が憎まれ役となるだけで信康とっても決して悪いことではないのじゃ。お主も皆に分かるよう説明して若様をもり立てることを忘れないでください」
「承知しました。それでは家康様から了解をもらい次第、しばらくは政務は三奉行とわれら宿老による合議制とし、若君にはその間に三河武士の棟梁としての器を磨いていただくといたします。若君は戦上手じゃ。政務直栽を停止したとて若君の戦の采配は皆は今まで通り従いまする。これで若君を侮るものなどおりませぬ。それはわれが保証いたしませぬ。若君を侮るものはわしが許しませぬ。」
忠次は、そういって胸をはった。
「それを聞いて安心しました。これからも信康をよろしくたのむぞ」
「この忠次にお任せください」
忠次は、そういって於大の方と上手く手を組めたと笑いが止まらなかった。彼の本心は、三河を信康の好き勝手にされたくなかったのだ。
家康が不在だった岡崎では、三河武士は今川の家来衆にこきつかわれ、手柄を立てても褒美もろくにもらえずくるしい生活を強いられいた。やっと今川から開放され、忠次らは自分だちで三河を治めることを望んでいた。
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