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入学2日目、学園の全学年の生徒達が校舎内にある巨大なドーム状の建物に集合していた。

「なぁ、レイド。」

「ん?」

「此処って何?あと一杯生徒が集まってるけど何かあるの?」

「昨日あの教師が言ってたろ?今日訓練場でクラス分けがあるんだとよ。」

「クラス分けぇ?」

「お前話ちゃんと聞いとけよ……いいか、まずこの学園は学年ごとに1組から5組までのクラスに割り振られる。出来る程良いクラス、まぁ数字の小さいクラスに行けるってわけ。」

「ほうほう。」

「そんで今日は確か魔法か身体能力の選択式の試験、明日に学力の試験があってクラスを決めるって感じなの……分かったか?」

「分かった分かった。因みにレイドは魔法使えるの?」

「使えん。ロアンは?」

「同じく。」

魔法大国サクメンと言えども全ての人間が魔法を使える訳ではない。使えるのは極一部。そしてその極一部の飛び抜けた才能と実力がこの国を魔法大国と呼ばれている所以である。……らしい。

「まっ魔法が使えなくても俺の身体能力なら1組ですら楽勝さ。」

レイドが自慢気に言う。まぁ確かにこいつ、足の速さに関しては人間とは思えない程の力を持っている。

「身体能力なら俺も負けてねぇぞ。」

「まぁ確かに………いや待てよ。俺ら男爵家ごときの人間が1組になんて入れて貰えるのか。」

「ん?あぁこそは大丈夫なはず。去年俺の兄貴が教師の抵抗を押しきって1組行ったから。」

「……え、まじ?」

「まじまじ。」

「スゲェなお前の兄貴。男爵家の人間とは思えねぇ。」

「なんか伯爵家とか公爵家とか出身の学友沢山作って教師陣に団結して言うこと聞かせたらしいよ。今でも時々やってるって。」

(因みに貴族階級は上から公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵じゃぞ。)←さっきまで昼寝してた。

「更に男爵家の人間とは思えなくなってきたんだが……。」

「まぁとにかく頑張ろうぜ。」





魔法の使えない俺達は身体能力の試験を選び、記録で勝負していた。

長時間走 レイド勝利

その他諸々 俺勝利

実戦試験 お互いとも対戦相手の教員をK.O.

という結果になった。

悔しがるレイドと共に他の生徒の試験が終わるのを待っていると、魔法の試験の方で大きな歓声が上がった。

「なんだ?」

「行ってみようぜ。」

即座に敗北の悔しさを野次馬根性へと切り替えたレイドと共に声の中心へ向かった。

「お!ホウ兄だ…。」

するとそこには魔法の試験を受けている兄の友人であるウィンチ伯爵家9男ホウ=ウィンチがいた。

「ホウ様ぁぁぁ素敵ぃぃ!!」

「こっち向いてぇぇぇ!!」

あちらこちらから黄色い歓声が上がっている。

「ホウってまさかあのホウ=ウィンチか?」

「なんだレイド、知ってのか?」

「いやこのサクメンであの秀才の名前を知らない奴はいないだろ!?」

「そんな有名なのか、ホウ兄って?」

「そりゃなぁ!てかなんだその呼び方、ロアンお前もしかしてアイツと知り合いだとか…」

「おーい、ロアン!」

突如俺を見つけたホウ兄が俺に手を振ってこちらに歩いてきた。。そのイケメン顔に浮かぶ笑みにまた一際大きな歓声が女性陣から巻き起こった。

「おおホウ兄!モテモテじゃーん。」

「それなりになぁ。久しぶり元気してたか?」

「バッチリ元気だぜ。」

「ん、そこの人は?」

「あ、どうもモコ男爵家長男レイド=モコです。噂に名高いあのホウ=ウィンチ先輩にお会いできるとは光栄ですよ。」

「これはご丁寧に、ありがとね。ウィンチ家9男ホウ=ウィンチだ、宜しく。」

(…む?)←また寝てた。

突如巨大な鈍い音がして、訓練場全体いや学園及びその周囲で大きな縦揺れの地震が発生した。そこらで悲鳴がする最中ホウ兄がポツリと呟いた。

「あちゃぁノーシュの奴、今年もやりやがったな。」

「兄貴去年もこんなのやったの。」

「え、え?どどどどどういう事!?」

少しすると揺れは直ぐに収まり、俺は恐らくこれが兄貴、ノーシュ=リガードの仕業だと伝えた。

「え、今のをロアンのお兄さんが?」

「そうそう。」

「絶対にですか?」

「絶対だね。」

「……ほ、本当に1組だったんだなロアンのお兄さん。こんな地震それくらいのレベルじゃないと出せないだろ。…もしかして先輩もこれくらい事出来たりするんですか?」

「まぁね、一応俺も1組だし。」

「俺、1組行けんのかなぁ…。」

「行けるでしょ。さっきの試験、俺にはギリ負けてたけど満点を余裕で越えるレベルの判定貰ってたし。」

「た、確かに。」

「身体能力の試験で満点以上の判定を貰えたんなら1組行きは確定してると思って良いよ。今日か明日の試験で満点以上の結果がどっちかでも出せたなら、例えもう片方が絶望的でも、1組には行けるはずだよ。そうでもしないと1組の人数が足りなくなるんだってさ。」

「え、そうなんですか!?」

「そうなの?」

「そうだよ。そんな感じて1組に居る奴何人かいるから。ノーシュとかはその代表かな。アイツは学力の試験中ずっと居眠りして名前以外全部白紙で回答を提出したから。」

「えっと…なんかもう俺の中でロアンのお兄さんがどんな人なのか想像つかなくなってきました。」

「大分いい加減な性格していよ。」

「ホウ兄も人の事言えない気もする…。地味にナルシストだったりするし。」

「それは関係ないかな。あぁそういえば君達の学年に1人ほぼ1組行きが確定してる子がいたよね。」

「え、誰ですか?」

「えーと……あっ!あの人だよ、ほらあそこ。」

そう言ってホウ兄は俺達に左側を見るよう促した。そして俺達が振り向いた先には、教師達に協力して、未だ先程の地震に混乱している生徒達に対し、落ち着く様に指示する一人の女子生徒とその隣に控えている彼女の付き人らしき女子生徒の計2人がいた。

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