3

(おい、ロアン……おい、おい!ロアン起きろ、起きるんだ。)

まだ違和感のあるベッドの上で、俺は俺の惰眠を阻止する声を感じ取る。

「…ん、………なんだよ虎さん。まだ寝かせてくれって。」

(おい、日を見ろ!真上だぞ、真上!!)

「…真上?………天井だけど。」

(違う!!時間が、時間がとうに過ぎておるのだ。今日、入学日なんだろ?朝早いんだろう?)

「…ん?……入学日?………………。」

(……………………………)

「……………っあ。」





俺の名はロアン。(知っとるが?)英雄を夢見る熱い男!(なんじゃ改まって、自己紹介か?)そんな俺はつい最近引っ越したサクメン王都国立学園の男子生徒療から学園校舎へと向かって王都内を全力疾走中だ。(実況か?なら私は解説を。)理由?それは単純カイメイ。(明快じゃ。)遅刻したからだ。そんで持ってちょっとだけ身体に電気を纏って高速移動中だ。(馬車よりちょっと速い位のペースじゃ、ちなみに今急いだ所で何も変わらぬ。急いであるのはコヤツが阿呆だからじゃ。)今更急いでいる理由?そんなの、ただただ走りたいからだ!溢れ出すこの焦燥感!!(…ん?おい、ロアン!ロアン!!)…何だよ虎さん煩いなぁ!折角良い感じだったのに!!(隣から何者かが高速で接近しておる。)……え?

『うわぁぁぁ!ビックリした!!』

十字路から突如出現した男性像に俺は走りながら大声を上げてしまった。

「………ん?その制服、学園の…さてはお前遅刻か?良い年して恥ずかしい奴だ。」

「遅刻じゃない寝坊だ!!そういうてめぇこそ人の事を言えないんじゃねぇのか?」

「なんだと。」

「なんだ、文句があるのか。」

(この速度とこの持久力、この者…)

訳の分からん奴と口論を喫しながら俺は高速移動を続けた。

そして俺と自称寝坊野郎は午後の日射しの本、同時に校舎へと突入した。





時は経ち、俺と自称寝坊野郎は「生徒指導室」なる部屋に閉じ込められていた。担当の者が来るまで待機せよだとか言われた。

「……はぁ、まだ疲れてる。」

「……ふぅ、療から校舎まで遠すぎだろ。」

(当然じゃろう。療の生徒は皆馬車で移動することになっておるらしいからの。)

俺か、こいつか、はたまた両方か、そのどちらかの言葉に虎さんが反応する。

「それにしてもてめぇ、随分速いじゃねぇか。」

突如声を掛けられて俺は隣に座っているこの男の顔を見やる。

「お前こそ、名前は?」

「レイドだ。てめぇは?」

「リガード男爵家次男ロアンだ。」

「男爵家ぇ?フッん道理で。」

「んだと?そう言うお前はどうなんだよ。学園の生徒なんだ、一応は貴族なんだろ?」

「言うまでもなんだろ。……男爵家だ。」

「いや、男爵家かよ!じゃあ何だったんだよさっきのは。」

「何となく言っただけだ。…改めてモコ男爵家長男レイドだ。まぁ宜しく頼む。」

「応よ!じゃ俺も改めて…ロアン=リガード、いずれ英雄になる男だ。宜しくな!」

「英雄?」

「そう英雄だ。レイドは何か無いのかよ?そういうの。」

「俺?えぇ俺か…うーーん、あっ!」

「なんだ?」

「性癖ドストライクな美女とお近づきになることだな!!」

「何だよしょうもねぇなぁ。」

「何だと?良いぜ見とけよ!絶対に為し遂げてヤるからな。」

「ん?今やるの意味違わなかったか?」

「良いんだよ細かいことは。そういや今年は豊作揃いだとか…」

その時、ここ生徒指導室のドアがノックされ、屈強な男性教師が入ってきた。

「……怖い過ぎだろあの教師。」

「あ、あぁ。…世界って結構広いんだな。」

「だが、しっかりと貞操を守り切った俺らの…勝利だ。」

(人間とはこれ程にも恐ろしい物だったとは…)

しばらくした後、俺とレイドは若干尻を庇いつつ、もう2度とあの部屋及びあの男教師の世話になるまいと心に誓ったのであった。ついでに例の男性教師には今日はもう帰れと言われた。夕日がなんとなく目に染みた。





翌日。レイドに誘われ、日の出と共に俺は昨年同様男子生徒療から校舎まで爆走していた。しかし、昨日とは違う。今日の登校は競争だった。結局は俺が余裕で勝ったのだが。(一瞬にも及ばない僅差であったぞ。)

そして、二人して飛び越えた校門が開き、馬車に乗って俺らより1時間程遅く登校してきた生徒達を見ながら俺ら2人は謎の優越感に浸っていた。

「おっ、兄貴とホウ兄だ。」

「……顔良し、胸良ろし、尻悪し……顔良ろし、胸悪し、尻悪ろし、……顔良ろし、胸良ろし、尻良ろし…………うーーーん。」

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