打明けた思い
「実際、どんなことが見えたりするの?
説明すればするほど、話が
「新之助は、幽霊とかの話しは信じる方?」
「幽霊というか、人が死んだら、やっぱりその意識は残ると思うから、それがいわゆる魂とか言われるものじゃないかと思ってる。誰でも納得して死んでいくわけじゃないだろうから、無念な思いを残して死んだ人は、幽霊として、人の前に出てくることもあるだろうなって思うよ」
「………」
新之介は、魂とか霊とかの存在を、理屈で
頭から否定したり、
(俺の周りで起こってること……話してみようかな……)
久しぶりにそんな気になった。いや、誰かに聞いてほしいという気持ちを、もう抑えきれなくなったのかもしれない。
「新之助、俺の周りで起こってること、話してもいいか?どの程度信じてもらえるかわかんないけど……」
俺の真剣な表情に、新之介は直ぐに反応した。
「いいよ。俺も聞きたいと思ってたんだ」
俺たちは駅の
帰宅を急ぐ人たちで、一時的にベンチへ腰掛ける人はいても、すぐに立ち去るので話しの邪魔にはならなかった。
俺は、
若月先輩の家に行って、
霊感が鋭くなりすぎて、未成仏霊たちに、死にそうなくらい追い詰められたこと。
それを
ある程度、力を
殺人事件の容疑者扱いを若月先輩がされてること。
そのことで警察に、事情聴取をされていたこと。
昨日、先輩が助けを求めてきて、どさくさに紛れて、彼女と関係を持ったこと。
気が付けば、入学してから今日までの、ほとんど全てのことを、洗いざらい話していた。新之介は黙って聞いてくれている。
―――
「俺の知らないところで、
「それは……、結局俺は、あの人を傷つけただけなのかもしれない…、でも昨日は、結界の張ってあるところしか、安全な場所は無いと思えたんだ」
「わかってるよ。先輩も、唯人が必死に守ろうとしてるの分かってるから、お前のこと好きなんだと思うよ」
俺は少し顔が赤くなった。新之介は、話しを正確に理解してくれている…そう思う。
「それはそうと、なあ唯人、若月先輩は本当に、殺人事件とは無関係だと思うか?」
俺は言葉を
「…無関係…ではないと思う。でも先輩は、人を殺したりはしてないよ。幽霊に
「…そうだよなあ、そうなるよなあ……。まぁ今日はもう遅くなったし、そろそろ帰らないか?唯人も疲れてるだろ?」
辺りを見回すと、もう駅周辺は真っ暗で肌寒さを感じる。時計を見ると夜7時を回っていた。
「そうだな。悪かったよ、変な話に付き合わせて。ありがとな、なんかスッキリしたよ」
「ああ、俺もスッキリした」
「そうそう、実はさ、俺もこの間、初めて幽霊見たんだぜ」
突然、思い出したように新之介がしゃべりだした。
「えっ、本当?」
「うん、俺のは唯人みたいに物凄いもんじゃなくてさ、うちの死んだじいちゃんが、夢に出てきたんだ」
「へーー、何か言ってた?」
「それがさ、何か言いたそうなんだけど、よくわかんなかったんだよね。今度俺んちに来てさ、霊視してくれると嬉しいけど」
「うん、わかった。いくよ。でも俺の力、あんまりあてにならないかもしれないけど」
「それでもいいよ。遊びに来いって」
新之介は電車に乗り込んだ。
「じゃあな、また明日」
「うん、今日はありがと」
扉が閉まり、電車が動き始める。
俺は駅のホームから、星の出てきた夜空を見上げた。
今日は、後藤へ、きちんと説明できた。お父さんのことも許してもらえた。
新之介にも、自分の現状を全て話すことができてスッキリした気分だ………。
しかし、一人になると、のど元に引っ掛かった、彼女への思いがこみ上げる。
(若月先輩は、今夜、無事に過ごせるのだろうか……)
家に着き、両親に「友達に相談事してて遅くなった」と正直なところを話した。
母ちゃんからは「早く帰ってきなさいよ」と言われる。食事とお風呂をませ、部屋に入った。反射的に付けたテレビから、全国ニュースが流れてくる。
『・・・潟県、新潟市甲区の事故現場からの中継です。この交差点で、突然あちらの黒いワンボックスカーが、車線をはみ出し、下校途中の、小学生の列に突っ込みました。ワンボックスカーを運転していた、43歳男性と12歳と11歳の女子児童は、病院に搬送されましたが意識不明の重体です。また、この事故により、他、重軽傷者3名も病院に搬送されていますが、今のところ命に別状はない模様です。現場は見通しのいい交差点で……』
子供を巻き込んだ交通事故。自殺目的だろうか?ひどい話だと思いながら眺めている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます