第4章 ~告白~

霊能力の開示

 疲れてはいたが、なぜか気力は充実していた。

 学校に着き、教室に入ると、新之介が声を掛けてくる。


「おはよう唯人ゆいと、昨日は大丈夫だったか?」


 そうだ、警察に事情聴取を頼まれたとき、終わったら連絡を入れると言っていたのだ。しかし、今朝方けさがたまでそれどころではなかった。


「おはよう。ごめん、昨日、夜遅くなっちゃって、メッセージ送らなかった」


 そういうと、俺は後藤の姿を探した。後藤はこちらを見ずに黒板の方をジッと見ている。怒っているかもしれない。俺は新之介に言う。


「本当にごめん。いろんなこと聞かれてて…家に帰ったのが夜10時近かった。…後藤怒ってるかなあ?」


紗希さきは怒ってないよ。昔からあんな感じだぜ」


 いやいや、俺の知ってる後藤紗希ごとうさきは、あんなにぶっきら棒じゃない。もっと天真爛漫てんしんらんまんだ。新之介が真面目な顔になった。


「なぁ今日は、…昨日の話しの続き…できるのか?紗希さきも聞きたがってた。俺も少しだけ事情は聞いたよ…」


「そう…。うん、もちろん話すよ。昼休みとか…、後藤は大丈夫かな?」


「紗希には俺から言っておくよ。その方がいいだろ」


「ああ、助かるよ、ありがとう新之介」


 彼の申し出は、いちいちありがたかった。


 俺は午前中の授業を、ほとんど仮眠に当てさせてもらった。先生には申し訳なく思う。

 そして、3時間目が終わった休み時間に、新之介と早弁はやべんをする。


 昼休みになり、ずっと不機嫌そうだった後藤が話しかけてきた。


葦原あしはら君、ずっと寝てたけど、大丈夫なの?」


「あっ、うん、大丈夫だよ、」


「じゃあ、今から話し…聞かせてもらえる?」


「うん、俺たち、早弁したからいつでもいいけど…、後藤、ご飯は?」


「私は大丈夫。それより早く話が聞きたい…」


 新之介も加わり、俺たち3人は、昼休み明けの、5限目の授業がある理科室へ、教科書を持って早めに移動し、そこで話しをすることにした。



 移動中、徐々じょじょに空気が重くなっていく。昨日の放課後に逆戻りしたような気分だった。

 理科室に着き、3人とも席に着く。いざ話そうとすると、かなり勇気が必要だった。新之介が、仲を取り持つように、


「よし、じゃあ、頼めるか…」


 と、微笑びしょうしてうながした。

 その気遣いに、俺も少し笑みを浮かべたのち、真顔になって話を切り出した。


「昨日はごめん、連絡するって言ってたのにしなかった」


「いいよ、新之介から聞いてる。夜遅くまでいろいろ聞かれてたんでしょ。葦原あしはら君も大変だったのはわかるから…」


「ありがとう…」


 俺は新之介に視線を一度動かしてから、また後藤を見る。いよいよ話さなければならない……。


「後藤…それから新之介、信じてもらえないかもしれないけど、本当のことを話すよ。……俺、昔から死んでる人が、たまに見えちゃうんだ。」


 後藤が言う。


「霊感があるってこと?」


「そう…だと思う。子供のころから幽霊とか…そういうのを見ることが多かった。それが最近、凄く強くなったというか……、高校に入ってからなんだ、今まで感じなかったものも、段々と感じられるようになってきた。その範囲がどんどん広がって、今じゃ生きてる人の周りの状況なんかも、不意に頭の中に入ってくる……」


「……」

「……」


 二人はそのまま、真剣に聞いている。


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