第6話 妹達とキャンプ、そして別れ
「よし、みんな揃ったな。これから川にキャンプをしにいくぞ」
「「「「「「「「「はいっ!」」」」」」」」」
俺の妹達は声を揃えて返事をした。
さすが9つ子だ。息ぴったりだな。
「兄上、本日は何故キャンプに行くのですか?」
妹達を代表して、長女のイクスが質問してくる。
キャンプに行くことは、今日の朝伝えた。
何故、かと問われると深い理由はないが、みんなに伝えなければならないこともあるため、せっかくなら可愛い妹達をいろんなシチュエーションで楽しみたかった。
「一番の理由は思い出作りだな。だが、キャンプとはいえ訓練もしつつ楽しんでいくぞ」
俺は8歳になっており、妹達も5歳になっていた。
本来の5歳は、まだ右も左もわからない子供だが、俺の妹達は違う。
それぞれが何かの天才であり、自分の将来を考えている賢い子ばかりだ。
「ま、兄様が私たちとしたいって言うなら仕方ないですわね。付きあってあげますわよ」
そう言うのは、次女のジーコ。
彼女はいわゆる”ツンデレ”だ。
赤い髪を長く伸ばし、両サイドで結んでいるツインテール。
「ジーコは行きたくないの? なら、お留守番してる?」
ジーコに声を掛けるのは、五女のウド。
特徴は、水色の少しウェーブがかかった髪。そして結構、毒舌である。
ちなみにこの世界では、髪色とかは遺伝に全く関係ないらしい。
父は金髪で母はピンクだが、俺は黒髪だしな。
「行きたくないとは言っていませんわ!」
少し慌てるジーコも可愛い。こちらをチラチラみて、気にする素振りがさらに引き立てている。
「ごめんなジーコ、俺と一緒にキャンプしてくれるか?」
「ふ、ふん! そ、そこまで言われては仕方ありませんわね!」
こう見えて何かあると一番にみんなの心配をするジーコは、一番愛に溢れている子だ。
「ねぇ〜ルド〜? キャンプはおやすみ出来る?」
次に声を掛けて来たのは八女のハーピ。
寝ることが本当に好きで、基本的には寝ている。
そのため綺麗な薄ピンク色の髪には、常に寝癖が着いている。
そして、姉妹の中で一番魔力が多いのがハーピ。
本人が訓練に意欲的ではないためまだ魔法は教えていないが、いずれハーピにも教えたい。
「ハーピ、太陽の下、川辺の草原で寝るのは気持ちいいぞ」
「そっかぁ〜。楽しみぃ〜」
「お兄ちゃん、キャンプに必要なものは準備しているよ」
「いつも気を効かせてくれてありがとうな、キュウカ。」
別室から荷物を持ち出して来たのは九女のキュウカ。
妹達の中で、一番の常識人だ。
ちなみに髪は俺と同じ黒髪で、肩くらいまでのセミロング。
「よし。キュウカが準備もしてくれたことだし、早速行くとするか」
こうして俺達は近くの川辺に向かった。
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「さて、今回のキャンプだが、基本的には自給自足にしようと思う。お互いの得意なことを生かしつつ、みんなで協力して楽しもう」
さて、誰が何を担当することになるかな?
「ふむ。では私とジーコは、森で動物を狩り、肉を調達して来よう」
そう言い出したのは長女のイクス。
イクスは1年間、剣の訓練をしているため狩りも問題ない。
そして次女のジーコは弓使いなので、狩りには持ってこいだ。
「しょうがないから行ってあげるわ。期待して待ってることね!」
腰に手を当てて言うジーコ、可愛いなぁ。
「それでは、私とチセとシロで火を起こしますわ! 体動かすのは得意ではないですが、周囲に落ちている木を乾燥させて火を起こすことくらいは出来ますわ!」
続いては、六女のロッカ。
一緒に魔法の訓練をしてる七女チセと、四女シロで火起こしを担当してくれるらしい。
「任せてくださいまし!」
「がん……ばり……ます」
「それじゃ私はね! 遊ぶ!」
「サンキ、働かざるもの食うべからずだよ?」
「うぅ、ウドのいじわる! だって他にやることないもーん!」
「はぁ……それじゃ私と一緒に食べれる植物を探しに行こ? 肉だけでは味気が無いからね」
サンキの方がお姉さんのはずだが、ウドの方が姉に見えるな。微笑ましい。
毒舌だが面倒見がいいウドも可愛いぞ。
「私は寝るね〜。おやすみぃ〜」
そう言ってハーピは日向で横になった。
まぁハーピだからな。仕方ない。
「それでは私は持って来たものの準備をしますね。食材が取れ次第、私が調理しますので持って来てください。」
しっかり者のキュウカがまとめる。
家では料理もしているため、こういうことはキュウカに任せて問題なさそうだな。
「よし、みんなやることが決まったな。危険はないと思うが、怪我だけには注意してな!」
そう言うと、皆が(ハーピは既に寝ている)一斉に返事をして、各々のやることに取り掛かった。
さて、俺は……釣りでもして魚でも仕入れますか。
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今は焚き火のを囲んでみんなで火を見ていた。
陽も傾いて来ており、そろそろ楽しい時間も終了だ。
キャンプは結果的には大成功だった。
イクス、ジーコは野うさぎや猪、鳥などの肉を調達し、
サンキ、ウドが食べられる植物や果物を集め、
シロ、ロッカ、チセがキャンプファイヤーの火起こしと、料理用の火起こし。
それをキュウカがまとめる。ハーピは健やかに寝てる。
なんて幸せな1日だったんだろう。
とてもいい思い出になったことだ。妹達にとっても。
これならば、俺がいなくてもしばらくは助け合っていけるだろう。
「最後に、みんなに伝えなければならないことがある。実はな、年が明けたら、俺は王都にある魔法学園に行くことした」
その言葉を聞いた妹達は、驚きを隠せない様子だった。
「あ、兄上? 私達は、一緒に行けないのでしょうか?」
長女のイクスが聞いてくる。
「あぁ。魔法学園は8歳以上から入学可能だからな。イクス達はまだ入学出来ない」
「そ、それでも、年に何回かは会えますわよね?」
次はチセだ。
「すまない、知っているとは思うが、王都はここから遠い。何より魔法学園が、よっぽどの理由がない限りは在学中に王都を出ることを禁止しているんだ」
「そ……そん……な」
シロも驚きを隠せないでいる。
「ふ、ふん、兄様なんて……どこにでも……いって……しまえば」
ジーコはそこまで言うと泣き出してしまった。
それに釣られて他の妹達も泣き出す。
「ルドぉ、会えないのはヤダよぉ」
「お兄様……私たちを置いていかないで!」
あぁ、俺は幸せ者だな。こんなにも悲しんでくれるなんて。
「みんなごめんな、勝手に決めて。だがもう決めたことなんだ。」
俺だって妹達と離れたくはない。
だが、それ以上に、妹達をありとあらゆる事から守らなければいけない。
そのためには力がいるんだ。
いくら天才と言われようと、実家の家では限界がある。
8年間で書庫にある本はすべて読み尽くしてしまったしな。
別れは悲しいが、これは再開の約束でもある。
「もう会えないわけじゃない。3年後、みんなが成長して入学してくるのを待ってるよ」
「はい……必ず、必ず私達も魔法学園に行きます……!」
キュウカは強いな。
「それに今日のキャンプでわかった。みんなで力を合わせてば、乗り越えられないことはない。俺はこれからが楽しみだよ」
そのための確認でもあったが、最初から何も心配は要らなかったな。
「絶対、絶対待ってなさいよ! 必ず会いに行くんだから!」
ジーコが涙を流しながら言う。
ジーコには悪いが泣いてる姿も可愛いよ。
こうして俺は、年が明けたと同時に王都へと旅立った。
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