第5話 妹と勉強


 今日は家の書庫で魔法書を読んでいた。

 ちなみにうちは貴族らしく、爵位は子爵家なのでまぁまぁの爵位の家柄だ。

 故に書庫にも様々な魔法の本が揃っていた。


「お兄様、何を読まれているんですか?」

「チセ、お兄様のお邪魔をしてはいけません!」


 声をかけて来たのは、六女のロッカ。そして七女のチセだった。

 妹達は顔がびっくりするほど似ている。

 まぁ細かな違いはあるが、それでもそっくりだ。


 それゆえ、親達でさえもたまに誰かわからなくなる時があるが、成長すると共に髪色や性格に個性が出て来て間違わなくなった。


 そんな妹達の中でも、ロッカとチセは瓜二つだった。

 まず二人とも金髪。そしてショートヘア。

 外見の違いは、髪留めのピンを左に指しているか右に刺しているか以外ほとんどない。


 ちなみに、右に刺しているのがロッカで、左に刺しているのがチセだ。


「それで、二人とも、なんで今日はピンを逆に刺しているんだ?」


 そう。最初に声をかけて来たのはチセではなくロッカだ。


「やはりお兄様には見抜かれてしまいますの……」

「チセ、だから言ったじゃありませんか。お兄様は私達を間違えたりしません」


 それは兄として当たり前だ。

 たとえ9つ子全員が坊主になろうとも、全員の名前を言い当てれる自信はあるぞ。


「ロッカ、チセ、また二人で入れ替わってメイドさん達にイタズラしていたんだな?」


 二人はたまにこうして入れ替わっては、メイドさん達に"どっちが本当の私でしょう"ゲームをしている。


「イタズラじゃありませんわ! お兄様は気づいてくれますもの!」


 そりゃ俺はお前達の兄だからな。


「ところで何を読まれていたんですか?」


 ロッカが再度、俺に質問して来た。


「あぁ、これは魔法の勉強をする本だよ。興味あるかい?」

「魔法! 興味がありますわ!」

「お兄様! 私も魔法を教えて欲しいです!」


 あぁ、こうやって強請ってくる姿も可愛いな。


「あの……私も……教えて……欲しい……」


 ロッカとチセと話していると、背後からシャツを引っ張られる。

 振り向けば、天使である四女のシロがいた。

 シロは髪が緑色のボブヘアーで、控えめでおとなしい子だ。


「シロ、読書してたのにすまないな。邪魔じゃなかったか?」


 シロはゆっくりと顔を横に振り、


「だい……じょうぶ」


 と答えた。可愛い。


 書庫にくると必ずシロがいるが、シロも読書を楽しんでいるので俺は極力声をかけない。

 前に一度、二人で同じ空間で本を読んでいるのが楽しいと言っていたしな。


「それじゃ、シロも一緒に魔法を教えて貰いましょ!」

「そうですわ! せっかく読書が好きなのですから!」

「わか……った……がん……ばる……にぃ……さま」


 うぅぅん! 天使が三人! 完璧だ!


「よし! それじゃ今日から三人も魔法の勉強をしようか!」


 自身の訓練をしながら、妹達とも絡める。

 あぁ、なんて素晴らしい家に生まれて来たんだ。



 ありがとうございます。神様。

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