第4話 妹と特訓


「兄上! こちらにいらしたのですか!」


 妹達が生まれてから3年。

 俺は6歳になり、妹達は3歳となった。


 みんな天才なのか、3歳になる頃にはしっかりと会話もできる。


 何よりも、可愛い!!


 見てくれよ! 今もマイエンジェルがこちらに向かって走って来てるぞ!


「どうしたんだい? イクス」


 イクスは一番お姉さんで、プラチナの髪色を伸ばしている子だ。

 お姉さんと言っても、ほぼ同時に生まれたはずなのだが、しっかりとお姉さんしているから不思議だ。


「何をしていらしたんですか?」


「あぁ、今は剣術の訓練だよ。木剣の素振りをしていたんだ」


「わぁ! すごいです! 私もやってみたいです!」


 イクスは体を動かすのが好きだからな。

 しょうがない! ここは兄さんが一つ稽古を付けてやろう!


「わかった。じゃぁイクスはこの短い木剣を使ってみようか」


 俺は庭にある物置小屋に行き、イクス用に短めの木剣を取ってくる。


「わぁ! ありがとうございます! 兄上!」


「よし、それじゃまずは剣を構えてみようか」


「はい! こ……こうですか?」


 いくら短いとはいえ3歳の子に木剣は少し重いかな。

 でも顔を膨らませて持つ姿を見たら、止められないだろう男なら。


「よし、それじゃ振ってみるぞ!」


「はい!」


「いちっ!」


「いちっ!!」


 おぉ、イクスが剣を振ってる。

 いいなぁ。将来は長女として、妹達を先導する騎士とかも似合いそうだな。何より妹と特訓。最高だ!!


「「よん!」」


 こうして穏やかな時間が過ぎていく。



「あ〜! イクスが兄様と遊んでる!」


 それなりの時間イクスと訓練をしていると、そこに天使の声がまた一つ。

 三女のサンキがやってきた。


 サンキは綺麗な黄土色のショートヘアの子だ。9つ子の中でも一番元気があるが、考えることは苦手らしい。


「ずるい! あたしも一緒に遊ぶ!」


「私は遊んでいたわけではない! 兄上と稽古をしていたのだ!」


「稽古? それってどんな遊び?」


 あぁ〜もう! 妹達の会話が可愛すぎる!


「サンキ、稽古は遊びじゃないよ。戦いのお勉強だ」


「あたし、お勉強は嫌い! でも稽古は楽しそう!」


「ならばサンキもやってみるか?」


「うん! イクスと兄様と稽古する!」


 よーしよし。これで可愛い成分の補充が出来るぞ。


「それなら一旦剣は置いて、相撲とりゲームをやろう」


「「相撲とりゲーム?」」


 さすがは姉妹。しっかりハモっていく。

 俺は直径2m程度の円を描き、ルール説明をする。


「ルールは簡単! 相手を押してこの円から出たら負けだ。転んだり膝を着いても負けだぞ」


「わぁ! それ楽しそう!」


 サンキは気に入ったようだ。


「それじゃまずはイクスとサンキでやってみよう」


「サンキ、手加減はしないよ」


「あたし強いもん! 負けないもん!」


 二人が円に入ったところで俺が、開始の合図をする。

 すると二人は互いの手を持ち、押し合い始めた。想定していた相撲とは違うがまぁいいだろう。


「やったー! あたしの勝ち!」


「負けた……私お姉ちゃんなのに……」


 勝負はサンキが勝ったようだ。

 イクスは半べそをかいていた。


「惜しかったなイクス、次頑張ろう。サンキはよくやったな」


「わーい! すごい??」


「あぁ。すごいぞ。それじゃ次は、二人と俺でやってみようか」


 俺と出来ることではしゃぐ二人もまたかわいい。


 3人で円に入り向かい合う。


「いつでもいいぞ」


「サンキ、いくよ!」


「イクス! 兄様を倒しちゃおう!」


 二人が同時に押しにかかる。

 もちろん俺はびくともしない。あぁ、頑張る妹達がかわいい。


 少ししたところで、俺は二人の腰に片腕ずつ回し、両肩に担ぎ上げる。


「二人ともよくやった! なかなかのパワーだったぞ! これは将来が楽しみだな!」


「すごい? 私達すごい?」


「あぁ! すごいすごい!」


「兄上に褒められた……これからも稽古する!」


「イクス、その意気だ! それじゃ汗もかいたし、水でも浴びに行こうか」


 二人は「やったー!」と喜ぶ。

 俺は二人を一旦降ろし、再度両肩に座るように乗せた。


 身体強化の魔法を習得したから、これくらいは朝飯前だな。

 え? もちろんこれをするために速攻で習得したよ?

 妹達、全員だって抱えられるさ。



 今日も穏やかな1日だったな。

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