第2話 夢の中
確かに僕は、あの列車から降りたはずで。
それなのにも関わらず、駅にはいなくて、公園にいる。
しかも、1番駅に降りた人は何人かいたはずのに、その人達の姿は見えない。
……それぞれの夢に行った、ということだろうか。
とても本当の事とは思えない。
というか、そもそもなぜ僕は公園にいるんだ?
「お待たせ!」
目の前にお母さんが現れた。
ああ、そうだ。今日はお母さんと一緒に買い物に行って、アイスを食べようと公園に寄ったんだった。
「はい、あんたの好きなクッキー&クリーム。」
さすが、お母さん。
僕はクッキー&クリームが一番好きだ。
二番目に好きなのは抹茶。
他の人は、ミントやら何やら、よくわからないものを美味しそうに食べている。
僕がそれにチャレンジしたことがない理由は、そもそもミントが苦手だからだ。
スースーする。そのアイスが好きな人は、スースーする感覚が好きらしい。
僕にはちょっとわからない。
いつか大人の味覚になったら、わかるんだろうか。
そんなことを考えながら、溶ける前に急いで食べる。
アイスは時間との勝負だ。
出来るだけたくさん食べたいのなら、溶けてしまう前に食べないと、アイスを「食べる」ではなく、「飲む」ということになってしまう。
それは嫌なのだ。
アイスは固形のものが好きで、液状のものは求めていない。
液状のものを飲みたいのなら、キンキンに冷えた炭酸やジュースでいい。
固形と液状が混ざったものなら美味しいが、すべて液状になったものは、正直アイスとは言えない。
勝手に僕が感じていることだが。
僕はアイスなのに、お母さんはなぜかかき氷を食べている。
やはり、かき氷を見ているとなぜか涼しくなるような気がする。
苺のシロップをかけたらしい。
ふんわりとした白い山に、暖かみのある可愛らしい色が混じっている。
お母さんが、ふとこちらを見て言った。
「ちょっと交換しようよ。」
キラキラと目を輝かせている。その視線をたどると、僕のアイスがあった。
僕も丁度、もう少し冷たくて甘いものが食べたいと思っていた。
「しょうがないなぁ。」
渋々というような風を装う。
思春期とは面倒くさいものなのだ。
お母さんが、さも嬉しそうにスプーンを伸ばしてきた。
僕もお母さんのかき氷にスプーンを伸ばす。
パクっと食べる。美味しい。
見かけの通り、ふんわりとした冷たい感じで、それと同時に苺の絶妙に甘い味が重なっていて良い。
チラッとお母さんの方を見ると、多めに僕のアイスを取っていっていた。
え?……は!?
何それズルい!!!
僕がムッとしていると、お母さんは僕の方を見ておかしそうに笑った。
「もう一口かき氷食べていいから。」
と、優しくあやすように言われた。
少しムッとする気もしなくはないが、まぁ、いいだろう。
気を取り直して、お母さんのかき氷をとって食べる。
……なんということだろう。最悪だ。
シロップがあまりかかってないところを取ってしまった。
少し落ち込んでいると、お母さんは吹き出すのをこらえているようだった。
肩が震えている。
気を取り直して、自分のアイスを食べる。
危ない。溶けてしまうところだった。
お母さんもかき氷を食べている。
どうやら、もうくれる気はないらしい。
ちょっとだけ期待していた僕は、がっかりした。
先に僕の方が食べ終わる。
足をぶらぶらさせる。
お母さんと顔を見合わせて、笑う。
ふわふわとした、平和な感じ。
温かい、この雰囲気が、大好きだ。
こののどかな瞬間が、いつまでも続きますように……。
僕はそう願う……。
夢の駅 ねむねむ @nemu2
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