4人目 ちょ、先生
調剤薬局で薬をもらう際、基本的には保険で一部負担されているため、支払う金額が抑えられている。
数日前にもらった薬を無くしてしまった場合などは、保険が適応されず全額自己負担なんとこともあるが、基本的には自己負担額は三割とかそのぐらい。人によって負担割合が変わってくるのだ。
☆
処方箋にも負担割合が書いてあったりする。
保険証も一緒に預かって、これが変わっていないか、病院と違いないか確認する。
その確認を終えて、薬の内容も問題ないと確認し終えていざ、患者さんに薬を渡そう。そう意気込んで、カウンターへ患者さんを呼んだ。
今回は患者さん本人ではなくて、ご家族の方が代理で受け取るようだった。
本人の様子は最近どうか、と聞いた。
「今日はこの前の検査結果だけを聞きに来たので、手帳とかも持ってこなかったのよ」
前回受診時に血液検査を行い、その数週間後に検査結果が出るから病院にまた来てください、といわれることがあるらしい。
今回の患者さんもそのパターンみたいだった。
検査結果についてどうだったのかを聞いて、メモをして。話を聞いていくうちに、ご家族の方がぽろっとこぼした。
「今、入院中でねぇ。最近会えてないわ」
おやおやおやおや?
入院中?
ちょっと待て。
薬をビニールの袋にしまっていた私の手はいったん止まる。
今回の処方箋は、目の前の個人医院で出されたもの。そこの医院には入院できるような設備はない。となれば、入院先は他の病院であるということまで瞬時に考えが至る。
聞き間違いかもしれない。
再度、本人が入院しているのかを確認したら、入院先の病院名と共に入院中であることを教えてくれた。
「先生にも言ったのよ?」
先生っ。ちょっ。
顔には出ないけど、私の中は大混乱だ。
これの何が大変か。存じない人も多いだろう。
実は入院先の病院によって、自己負担額以外の料金を請求する先が異なるのだ。
基本的には、入院している病院で薬が処方されるために、入院中他の病院から処方箋が発行されない。だが、場合によっては処方箋が発行されることがある。
薬をお渡しすることを一度中止し、ご家族の方には申し訳ないが時間をいただいた。
その間に入院先の病院に電話。薬が必要なのかどうかを確認する。
入院できる病院ともなれば、大きな病院であることが多々ある。電話問い合わせにも時間がかかってしまう。
待つこと三十分近く。病院からの返答は、「病院内で処方するため、他の病院で処方箋を発行されても対応できない」とのこと。つまり、今回の処方箋は必要ないとのことだ。
その旨をご家族に説明。
病院でも処方箋発行に伴ってお会計が生まれているため、処方箋やお薬手帳など全てお返しして病院に戻ってもらうことになった。
「お手数お掛けしました」
ご家族の方は、申し訳なさそうに頭を下げながら病院に戻った。
申し訳ないのは私達の方だというのに。
たまたま今回、薬局が混んでいたために、薬を準備するまでに三十分。その後入院先の病院に確認するまで三十分。トータル一時間も待たせておきながら、病院に戻ってもらうなんてことになってしまった。
ご家族の方の貴重な一時間を無駄にさせてしまったのだ。
これは本当に申し訳ない気持ちになる。
互いに大変な思いをしないためにも、入院しているときは入院先の病院に薬を他でもらうべきなのかどうかを確認してください。本当に。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます