3人目 それはちょっと
薬をお渡しする際、患者さんによく確認をする。
どんな薬をもらうはずだったのか、と。中には本当はもらうはずだったのに、今回ないじゃないかとクレームになるケースもあるから。
足腰の弱いおばあさんに薬を渡すことになった。
本人に今日の薬の内容について言う。「前回と同じ、いつもの飲み薬が出ていますね」と。おばあさんもしっかりと、「そうよ」と返した。
念には念を。
薬を一つずつ出して、物と数が間違っていないかをおばあさんと一緒に確認していく。
そして全ての飲み薬を確認した後に言うのだ。
「塗り薬が出ていないわ」
え?
何だって?
塗り薬?
パソコンを使い、前回お渡ししてある薬の記録を確認する。
間違いない。前回、前々回と塗り薬は出ていない。
処方箋にも塗り薬は書かれていない。
「塗り薬がほしかったのですか?」
「そう」
おかしいな、最近処方されていないな。というか、塗り薬って何?
塗り薬とひとくくりにしても、効果は色々ある。
痛み止めに、抗生剤や抗ウイルス剤、ステロイド系に保湿剤。さぁ、どれだ!?
処方歴を遡っていく。やっと見つけた塗り薬は、痛み止めだった。しかも最後に処方されていたのは、半年前である。
もしかしたら、病院の先生(医師)が処方箋に書き忘れてしまったのかもしれない。そう言うこともしばしばあるから。
「先生には塗り薬についてお話ししました?」
こう聞くと、処方し忘れかどうか確認できる。
今回も忘れちゃったのかなーと聞いてみた。
「ううん、言ってないわ」
ええ……。そりゃ処方されないって。先生はエスパーじゃないんだから。
毎日何十人も診察して、そろそろこの患者さんはこの薬がなくなるから出しておこうなんてことできないって。
なんで医師に言ってないものがまた処方されると思っているのでしょうか。
先生はそんな超能力は持ち合わせていません!
「先生にもね、言わないと処方されませんよ」
「そうねぇ。じゃあ今度伝えるわ」
おばあさんはどうしても塗り薬がほしかったわけじゃなかったみたいで、今回は塗り薬なしのままでいいとのこと。
多分、次回も同じことをやるんだろうなと思った。もし、処方されていなかった時は病院に電話をしようと。
翌月にこの方へ薬をお渡しすることになった際、お薬手帳を確認していたら、別の病院でほしかった塗り薬が出ていたようで、この時の処方箋に塗り薬の処方はなかった。
医師も看護師も薬剤師も。
人間はエスパーじゃないので、言葉にしないと伝わりません。
自分の状態をちゃんと伝えてください。後から薬局で言われても困っちゃいます。
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