第6話 遊園地にて(2)

「ゴーカート楽しかったー!」

「…なにがよ。」


清二は私をドキドキさせておきながらも、いつもと変わった様子はない。小さい頃は、私ばかり彼を頼り、我が儘を聞いてもらっていた。なら、今くらい彼の我が儘に付き合うのも悪くない。


「詩織はさ…思ってるよりずっと強いんだよね。」

「え、急に何。」

「俺にすがり付いてくる小っちゃい時の詩織は自分が守ってあげなきゃって思ってたから。今も同じふうに思ってるけど、『慣れてるから。』って突き放すよね。俺がお節介すぎて困ることもあるでしょ。」

「え、でも…。」


言葉を探す。清二が私の誕生日を祝ってくれたのも、守りたいと思ってくれていたから。じゃあ、自分はそれに甘えて本音を言ってもいいのだろうか。


「ごめん詩織。俺は詩織と再会できたのが嬉しくて迷惑かけてる気がする。」

「…いまさら何言ってんの。私は清二のこと普通に…大事だと思ってるから。そういうの気にするのナシ。」


自分が発した「大事」に何の意味があるか今は考えないでおく。私を助けてくれたのも、ドキドキさせてるのも清二なのだから。


「…詩織。」

「あー、私お化け屋敷行きたかったんだよね。」


しんみりとした空気を切り裂く。今は素直に楽しまなくちゃ時間がもったいない気がして。


「詩織、お化け屋敷行けるの?」

「…暗いところは慣れてるつもりなんだけど。」


しばらく清二は押し黙って、やがてスッと手を出した。


「手…繋ぐ?」

「!!なんで!?」

「暗いのとか虚無感とか怖くて俺の家に来てたんでしょ。じゃあ今でもそういうのは無理かな…って。」

「…手はやめとく。でも…—。」


ご名答。本当は今でも暗いところはゾッとするし苦手意識がある。でも、これ以上清二に掻きまわされたくはない!しかしやはり苦手なので…清二のTシャツを後ろから少し引っ張る。


「…ここ掴んでてもいい?」

「…そういう不意打ち。」


入り口付近は薄暗く、清二の顔はよく見えなかったけど。ほんの少しピンク色だった気がする。

だんだんと周りは暗くなっていく…—。


                         遊園地編、続く。

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