第6話

モモゾノは、何も言わない。ただそこに留まっているだけである。

「……何もなし、か?ならこちらから」

「海斗、待って。モモゾノは一人やない。アイツ、知能がありよるわ」

 桃虎が視界に捉えたのは、彼女の家族で会った。優しかった姉、厳格な父、男尊女卑の母。モモゾノはあえて彼女らを残しているのだ、それは間違いなかった。桃虎は悔しさから、歯を食いしばる。どれも助けられなかった命だ、戦意を剝ぎ取るにはこれ以上のモノはない。

「落ち着け桃虎、アレはもう家族じゃない!」

 海斗の叫びも空しく、桃虎はモモゾノの方へ走り出していた。

「返せ、返せ……!何の関係も持たん人やった、全員幸せな日々を送っとった!」

 泣きじゃくりながら桃虎は散弾銃を撃ちまくった。家族だったモノにも、モモゾノにも弾が当たる。桃虎は無我夢中で、弾切れを起こすまでずっと撃っていた。

 しかし、それでもモモゾノは壊れなかった。何も語りかけてこないのが、かえって不気味だ。

「桃虎、下がれ!」

 海斗が言う。反撃である。桃虎は判断が鈍っており、かわすことが____

「……大丈夫、か?」

出来ていた。それは海斗のおかげである。彼が間一髪で、桃虎を突き飛ばし自分が攻撃を浴びたのだ。機関の特殊スーツに穴が開いた。二度目はないだろう。

「海斗、ごめん……私、冷静さを欠いてた。まだまだだね」

「仕方のないことだ、桃虎。散弾銃の弾はまだあるか?」

「あるけど……」

 桃虎は海斗の考えを読み取った。自分が囮になり、モモゾノを殲滅する。海斗は捨て身の攻撃になるが、それだけ任務を遂行したいのだろう。それとも愛する彼女の為かな____桃虎はそう推理したが、茶化す気分にはなれなかった。散弾銃の弾を装填しながら、桃虎は提案する。

「……海斗、捨て身なら私の方が」

「いや、僕にやらせてくれ。先ほどは何も出来なかった。だから今度は僕がやる」

 それは覚悟だった。そのまま海斗は「いけるか?」と問う。桃虎が頷くと、散弾銃を構えモモゾノに突進していった。

 モモゾノは動かない。桃虎は散弾銃を連射するが、それではあまりダメージを与えられないことは分かっていた。しかしそれでいい、こちらは囮なのだから。モモゾノの視線が再び桃虎を捉える。そしてビーム砲を放つか否かというタイミングで、海斗はジャンプしモモゾノを思いきり蹴とばした。吹き飛ぶモモゾノ。海斗は走って機械の転がった方へ行き、頭の部分を打ち抜いた。機械は活動を停止し、ぴくりとも動かなくなった。

「……ミッションコンプリート?」

「だな。後はコイツを機関に持ち帰るだけだ」

 モモゾノは、厳重にカプセルに保管された。二人は帰路へとついた。今度は安全運転で、機関の本部がある茨城県つくば市へと走り抜ける。

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