第十話:旅立ち
歓迎の宴の翌朝、まだ早い時間に目が覚めた。
ちょっと頭が痛い。昨晩は飲みすぎたようだ。
記憶があいまいだが、確かミレイとの飲み比べには惨敗した記憶がある。
いや、途中でネフィーが乱入してうやむやになったからノーカウントかね。
何にせよとんでもない機会を逃しちまったもんだ。
我ながら情けない。
さておき、今日は王都に旅立つ日だ。
街道を行く楽な行程と言っても気を引き締めないとな。
とりあえず顔でも洗いに行きますかね。
なんて思いながらベッドに手を着いて起き上がろうとすると、途中で何やら柔らかいものが手に当たった。
なんだと思ってそちらを見ると。
そこには、神々しいネフリティスの姿があった。
シーツの上に流れる長い銀髪に埋まるように眠る少女。
普段の凛とした調子とは違う、まるで幼子のようなあどけない表情。
安心しきった様子で微笑んでいる姿は本当にお姫様のようだ。
何故ここに居るのかという疑問より先に、美しいと心から思ってしまった。
そして同時に、超エロいなと思ってしまった。
白雪のような肌を隠すのは、何故か着ている俺の半袖シャツ一枚のみ。
上は鎖骨が見え、下は太もも付け根の際どい部分ギリギリまでを覆っている。
大きな胸は重力に逆らってたゆんたゆん揺れていて、いまにもこぼれてしまいそうだ。
そんな無防備なネフィーがいま、目の前に。
思わず伸び掛けた右手を左手で押さえる。
ダメだって! さすがにそれはまずいって!
でも、ちょっと触るくらいなら……いや、そこでネフィーが起きたらヤバイだろ!
しかしこんなチャンスはもう二度と巡ってこないだろうし。
だがネフィーに嫌われるようなことはしたくない……!
くそう、俺はどうしたら良いんだっ!?
「……んゅ。もう朝かの? んぅぅっ」
寝ぼけながらシーツの上で伸びをするネフィーをガン見する。
柔らかな曲線を描く女体は神秘的で、すらりと伸びた白い手足は非常に魅力的だ。
銀糸のような髪が縁取る芸術、それが目の前で躍動的に動いている。
伸びの勢いで形を変える胸も素晴らしく、つい拝んでしまいそうになる程だ。
つまり、最高にエロ可愛い。
思わず手が伸び、するりと頬に触れる。
柔らかに形を変えるそれはとても愛らしく、そして。
その隣にある瑞々しい唇に眼が吸い込まれ。
「ふやっ!? ど、どうした貴様殿!? ね、寝ぼけておるのか!?」
その叫びで我に返った。
あっぶねぇ! いま理性飛んでたんだが!?
あやうく社会的に死ぬところだった!
いかんな、溜まってるんだろうか。
これは気を引き締めておかないと色々と不味い気がする。
「その、なんだ……貴様殿は我に触れたいのか?」
「誤解だ。ネフィーを起こそうとしただけだ」
「そ、そうか……大儀であった」
よし、なんとか誤魔化せたか。
「ところで俺達はなぜ同じベッドに?」
「ん? あぁ、酔っ払った我が貴様殿をベッドに引きずり込ん、で……」
ばしゅぅ、とネフィーの頭から湯気が出た。
顔どころか全身が真っ赤になっている。
引きずり込んだって、どういう事だ?
「ネフィー?」
「いや別に折角だから一緒に寝たいとか貴様殿の匂いを嗅ぎたいとかそんなことはなくてだな!?」
「落ち着け、誰もそんなことは思っていない」
「そ、そうか……それはそれで複雑なのじゃが」
何故だか拗ねた様子のネフィーに内心ドキドキしながら、表面上はジェントルマンになりきってみせる。
ていうかヤバイ。何だかネフィーがいつも以上に可愛く見える。朝からこの可愛さは致死量だ。
よく分からんが、冷静になるために冷たい井戸水で顔でも洗ってこよう。
「ネフィー、顔を洗ってくる。また後でな」
「う、うむ。それではな」
タオルを持って部屋を出る寸前、後ろから。
「……寝たふりをしていれば良かったかのう」
そんな声が聞こえて、思わずドアに額をぶつけてしまった。
※
エルフの里のみんなに見送られながら馬車を出発させ、ガタゴトと街道を行く。
それほど危険はないと思うが、念のため周囲を警戒するのは忘れない。
「それにしても人間の王都って初めて行くっすね。やっぱり人が多いっすか?」
「そうだな、多種族国家だからいろんな奴がいるぞ」
昔行った時は人間だけじゃなくて獣人なんかもたくさんいたしな。
しっかし、考えてみれば王都なんて何年ぶりだ?
長い事行ってないから街並みも変わっちまってるかもしれん。
「貴様殿、王都に着いたら案内をしてくれぬか?」
「そうだな。俺の分かる範囲なら構わんぞ」
「人間の国か。楽しみじゃのう」
ワクワクした表情に微笑ましいものを感じてつい笑みがこぼれてしまう。
しばらくは楽しい日々が続きそうだ。
空は晴天。いざ、馬車旅日和ってな。
※
なんて思ってたんだけどなぁ。
王都の二つ前の街、ドルバーグ。
隣国アマルガム(俺が雇われていた国)との戦争の最前線に近い街だ。
だから検問が厳しくなっていて街門前で馬車を止められたのだが、兵士の一人が俺の顔を見るなりと砦に走っていった。
なんだろうかと思いながら待つこと数分。
その兵士は俺に頭を下げながらこんなことを言って来た。
「わが軍の将軍がお待ちです。ぜひご同行ください、『
何でこの街にその名が広まってるんだよ。
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