第七話:和解


 ドワーフのミレイをエルフの里に連れていくと、目をキラキラさせて里中を見渡していた。

 まぁドワーフの集落にない物ばかりだしな。

 とても微笑ましいんだが、面倒ごとを先に片付けてしまいたい。


「ミレイ、先に長と話しをしたいんだが良いか?」

「あ、了解っす。後で案内してくれないっすか?」

「俺もよそ者だからな。長に聞いてみよう」

「やる気が出たっす!」


 ぐっとガッツポーズ。可愛いんだが、あまり飛び跳ねないで欲しい。

 褐色の肌がシャツの首元からチラチラ見えてるのがスゲェ気になる。

 なんてーか、鎖骨が見えてるのがすでにエロイ。


 さておき、ちょうど長の家に着いたな。

 女体の神秘に関しては後でじっくり検証することにしよう。


「ジェイドだ。ドワーフの使者を連れてきたぞ」

「これはこれは。歓迎いたします」

「ども、ミレイっす。集落の倉庫番してるっす」

「……倉庫番ですか? ジェイドさん、申し訳ないが説明をしていただけますか?」

「あぁ、中で話そう」


 中にはネフィーも居るだろうし、美少女成分は多いに越したことは無いからな。

 特大と並盛、両方とも堪能させてもらうとしよう


 ※


 という訳で。

 エルフの長のレリウスさんと、ドワーフのミレイ、そして俺が円を描くように座っている。

 そしてとても残念なことに、ネフィーはいま席を外しているらしい。

 まぁ仕方ないか。知り合いとかも心配してたろうしな。

 ただ里を出る前にはもう一度くらい顔を合わせておきたいところだけど。


「話は分かりました。こちらとしてもありがたい提案です」

「話が早くて助かるっす。まったく、誰っすかね、エルフは話を聞かないとか嘘言い出した馬鹿は」


 話は簡単にまとまり、エルフとドワーフは互いに必要な物を交易することになった。二種族間の仲も良くなることだろう。

 さてさて。これで依頼達成になる訳だが。


「そういえば報酬の内容を聞いてなかったな」


 ネフィーのスカートの中に気を取られすぎてたな。

 いかんいかん、その辺りはしっかりしてないとまたミスっちまう所だったわ。

 タダ働きはゴメンだからな。


「これは申し訳ありません、私も気が急いていたようですね。お恥ずかしい限りです」


 金髪イケメンは照れ笑いしながら、後ろにあった箱から小さ目な球を一つ取り出した。

 何だか魔力を感じるし、魔法を封じ込めた魔導具だろうか。


「これはこの里でしか作ることの出来ない特別な魔導具です。封印する魔法を何度でも変更できる優れものですので、どうか受け取ってください」


 うお、なんだそれ。超便利じゃねぇか。

 普通なら先に封印した魔法を使えるだけなのに、こいつは何回でも再利用できるってことか。

 売ったらものすごい額になりそうだな。


「そうか、分かった」


 ラッキー。これでもう死ぬまで遊んで暮らせるかもしれん。

 美少女とも知り合いになれたし、最近運が向いてきたな。

 あ、でもネフィーともここでお別れなんだよな。


 うーん、それはかなり勿体ない気がする。

 何とかして一緒に居られないもんかね。


「ところでジェイドさん、次の依頼があるのですがお話だけでも聞いていただけませんか?」

「何だ?」

「ジェイドさんのおかげで私たちはこうしてドワーフとも和解出来ました。そのことを人間の国にも広めて欲しいのです」


 なるほど。外の世界にいるエルフやドワーフにも今回のことを教えないといけないしな。


「その程度なら構わない。行く先で広めておこう」

「助かります。可能であれば王都でこの話をしてほしいのですが、王都に向かわれる予定はありますか?」


 王都か。ふむ、どうするかな。

 人間の国で一番デカい街だから話を広めるのに最適だけど、あそこって物価が高いんだよな。

 でもまぁ、この後の目的地も決まってなかったし、別にいっか。

 王都なら魔導具を売り払える店もあるだろうし。


「予定にはなかったが構わん。急ぎの旅でもないしな」

「ありがとうございます。報酬は前払いで金貨をお渡しします」


 え、まじで? 話するだけで金貨もらえんの?

 普通の街人が何年もかけて稼ぐ額じゃねぇか。

 それはさすがに悪い気がするんだが。


「代わりにという訳ではないのですが、良ければ王都まで旅に里の者を同行させてはいただけませんか?」

「同行? 俺は構わないが、なぜだ?」

「新たな見解を得たいからです。今回の件で我々の思考が古い記憶に囚われていたことが分かりました」


 なるほど。長く生きてる分、新しい発想ってもんが生まれないのかもな。

 その辺は多種族に比べて短命な人間の方が得意な分野なのだろう。


「あ、それはうちもお願いしたいっす。うちも頑固者の集まりっすからね」


 ドワーフもかよ。確かにこっちも頭が固そうだしなー。

 でも別に一緒に王都に行くくらいなら大丈夫だろ。

 エルフとドワーフと三人で旅とか、中々できることじゃないしな。

 長い道のりでもないし、気楽にやるとしようか。


 うーん。しかし、やっぱり金貨は貰い過ぎだな。

 人間欲張ると良いことが無いっていうし、ここは断っておこう。

 ネフィーとの出会いと魔導具でお釣りが来るほどだしな。


「分かった、どちらも引き受けよう。だが報酬はいらない。貴重な外貨だろうし、里の為に使ってくれ」


 ここはネフィーの故郷でもあるしな。

 それにここで金をもらうよりコネを作ってた方が後々得しそうだし。


「そうですか……ありがとうございます」

「感謝するっす! んじゃ早速集落に行ってくるっすよ!」

「いえ、折角の機会なのでドワーフには私の方から使者を送りましょう。後ほど感謝と歓迎の宴を開きますので、それまでは里を見て回られてはいかがですか?」

「それは良いっすね。うちも混ぜてもらえないっすか? とびっきりのお酒があるっすよ!」

「ではその旨も合わせてお伝えしておきます」


 エルフのご馳走にドワーフの酒か。こいつは豪華だな。

 大したことはしてないからちょっと後ろめたいけど、せっかくの申し出を断る理由もない。

 滅多にない機会だし、美味いものをたらふく食わせてもらおう。


「ありがたい。世話になろう」

「では時間まで里の見学などいかがですか? 人間のジェイドさんには珍しい物もあるかと思いますよ」

「そうするか。ミレイとの約束もあるしな」

「感謝するっす!」


 うん、やっぱり可愛い女の子が嬉しそうにしてるのは良いな。

 こっちも得をした気分になる。


 あ、ていうかいま気付いたけど、これってデートなんじゃね?

 やべぇ、戦争とは違う意味で緊張するんだが。

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