第8話
ロコから『夕飯の準備で三十分くらいかかるから、その間にお風呂入っちゃえば? 夕飯前のお風呂、最高に気持ちいいよ♪』と
仕事のある普段はスッキリしたいという気持ちよりも仕事の疲れの方が勝ってしまい、次の日の朝のシャワーだけで済ませてしまっている。
世の一人暮らしの社会人のお風呂事情なんて、だいたいそんな感じだと思う。
風呂場の天井をぼーっと
昨日の出来事は夢ではなかった......。
あの
だが現に、ロコは確かに、ここに存在する。
見た目はだいぶ変わってしまったが、そんなことはどうでもいい。
「......漫画やアニメの世界だけの話しだと思ってたけど、前世の記憶を持って生まれてくるなんて......本当にあるんだな......」
気がつけば、俺はそんなことを
”現実”だと実感した今でも、不思議で
ロコも『また会えて嬉しい』と言ってくれた。
――果たして本当にそうだろうか?
彼女が柴犬だった時の最後を考えると、
俺と母さんに
ロコを疑う自分に嫌気がさす。
どうも母さんを亡くしてからの俺は、思考がネガティブな方へと行きがちになる。
昨日の母さんが亡くなったことへの反応を見る限り、その可能性は極めて低いと思う。
でも、俺のせいでロコはあんな目に......。
仮にロコに恨まれていても、それでもいい。
俺は”一人”ではなくなったのだから。
それに今は彼女の好きにさせたいと思っている。
それが、彼女を死なせてしまったことへの、少しでも”
一方的な自己完結を済ませると、俺は湯舟から上がり、部屋着に着替えた。
「......これ、本当にロコが作ったのか?」
「当たり前じゃん。私以外にだれが剣真の夕飯作るんだし」
リビングに向かうと、丁度タイミング良く夕飯のおかずが運ばれてきた。
今日の夕飯はハンバーグ。子供っぽいと思われるかもしれないが、俺の大好物だ。
見た目も
しかも付け合せにサラダとスープも用意されていて、栄養バランスも申し
「あと少しでご飯の解凍終わるから、もうちょっと待っててね」
「分かったー」
本当は今すぐにでもハンバーグにかぶりつきたいところだが、ロコの目の前。そんな
やってしまったら最後、『剣真は待て! もできないんだ〜』とからかわれてしまう。
元・飼い主の
おあずけ状態で待つこと約三分。
ご飯もようやくテーブルの上に運ばれ、夕飯の準備は
二人共ほぼ同じタイミングで『いただきます』を言うと、俺は真っ先にハンバーグから
「......どうかな?」
不安そうにこちらをじっと
そんなの、答えは決まっている。
「......ヤバイ。想像以上に美味いんだが」
「でしょー! このハンバーグ、隠し味に
緊張から解放されて、ロコは思わず
「昨日の味噌汁でも思ったけど、ロコは本気で料理の才能あると思うぞ。どこで習ったんだ?」
そう言って俺は、ハンバーグとご飯をバランス良く交互に口に運んでいく。
「習ったも何も、ほとんどSNSの料理サイトを見て、
「いや、それでも凄いと思うぞ。俺もSNSでバズった『美味しい○○の作り方』とかいうのをたまに作るけど、全然美味しくできないし」
「作り続けていれば、そのうち剣真も料理が上手くなるよ。......でも、その必要はないかな。だってこれからは、毎日私が夕飯作りに来るから☆」
おでこの前に左手でピースをし、軽くウインクして
「でも本当にいいのか? 昨日はつい流れでOKしちまったけど」
「そんな心配いいから。私が剣真の夕飯作りたいの。ほら、早く食べないと、せっかく剣真の大好物が冷めちゃうよ?」
「......やっぱり俺の好物だって知ってたか」
「当然! 食卓にハンバーグが出された時の剣真、毎回凄く嬉しそうだったし☆」
母さんの作るハンバーグは、ロコの作るハンバーグのように、お
味も凄く美味しいというわけでもない。
だが、食べると心から安心する味。
俺にとってのお袋の味を感じるのがハンバーグなんだ。
「ママさんの作るハンバーグには
お袋の味とロコの手料理を比べるなんて、そんなのできるわけがない。
「......何言ってんだ。ロコの味がして、めちゃめちゃ美味しいに決まってんだろ」
変に回りくどい言い方をせず、俺はストレートに気持ちを言葉にして伝えた。
そのつもりだったが、ロコを見ると、何故な顔を真っ赤にしていた。
「剣真.........私達、その......家族なんだから......そういうのはちょっと......」
「バ、バカ! 何変な勘違いしてんだよ! 俺が
「あー! 今お姉ちゃんに対してガキって言ったなー!! だから私は剣真より後に生まれたけど犬だから成長が――」
「だぁぁぁぁぁぁ! もういろいろ
しおらしくなったと思ったら、急に
それに対して俺は、ひたすら残りの夕飯を次々に口の中へ
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