第8話 除霊作戦

リビングで待っていると恒樹が少しスッキリした顔で


「なんか分かりました?」


と声をかけてきた。


顔色も少し良くなっている。


「今日は井場やんの家泊まったら」


バンッッ


急に破裂音がした。


3人とも同じ方向を見る、場所はベランダからだった。


「びっくりした~」


最初に声を出したのは自分だった窓越しにベランダを見てみるがそれらしいものは見当たらない。


振り返ると恒樹が蒼白な顔で固まっていた。


「どないしてん?」


なんとなく想像はつくが…


「見えなかったすか?ベランダにおっさんが立ってこっち睨んでたんすけど」


こっわ・・・


「いやまったく」


「私もなんも見えんかったけど」


「さっきの音はポルターガイストやな、ほんまにあんねんな」


ゾッとしながらも、私はそのおっさんの幽霊が部屋の中にいないのはなんでなんやろとか考えていた。


「なんで井場やんの家なんすか?」


「なにが?」


「さっき言ったじゃないすか井場やんの家泊まったらって」


「あぁ」


会話が頭からとんでいた


「とりあえず3パターン考えてんけど

①恒樹に憑いてる

②家に憑いてる

③両方に憑いてる

かな、手っ取り早いのが恒樹が他所にいってる間に家で変化あるかないかで判断出来るかなと思って、井場やんやったら急に行ってもどーもないやん」


井場やんはよく三人で遊んだ恒樹のひとつ下の後輩である。


独身で独り暮らしなので急に行っても特に問題もない。


それにしてもさっきのポルターガイスト騒ぎのあと、幽霊までみてこの切り替えようも凄い。


なんでこいつに幽霊なんか憑いてんねやろ?


「ひなちゃんになんかあっても嫌やし早めにスッキリさした方がいいんちゃう?」


「そーっすね」


「え、じゃあ今日私とひなの二人で寝るの?」


そりゃ嫌に決まっている。


「じゃあ、日改めてこの部屋で除霊作業してみる? 素人除霊やから成功するかは微妙やけど、それでアカンかったら寺か神社でお祓い頼む感じやな」


「俺も調べたんすけど、まぁまぁな値段しますよね」


「そうなんや、まぁ、行くなら出来るだけ大きい所に行った方が良いみたいやで。 参拝者が多いほど力あるみたい」


「霊感の強い人とかじゃないんですか?」


「ん~、神社は虎の威を借るなんとやらみたいな感じらしい。 そもそも除霊はしてるとこの方が珍しいな、だいたいお祓い、成仏させるんじゃなくて追い払うっていう感覚らしくて追い払うのに「おい、うちにはこんなに凄い神様がついてんねんぞ! 早く逃げたほうが良いぞ」みたいな感じで。 寺は除霊やってる所もあるみたいやけど」


「色町さんはどーやるんですか?」


「恒樹に教えた方法にちょっと手を加えるぐらいやで、ほんまに素人除霊やからあんまり期待せんといてや」


「いつします?」


「ん~準備はたいしたことないけどこの部屋防音どんな感じ? 隣の住人の声とか生活音とか聞こえる?」


「あんまり気にしたことないですけど、なんかうるさい感じですか? 除霊するとき」


「ちょっとな」


「ここでするんですか?」


奥さんが聞いてきた。


「その方が手っ取り早いかと思って、その間実家にでも行っててくれる? 確か近かったやんね?」


「近いです分かりました、じゃあ私はひな連れて実家行っとくね」


「準備は今日の帰りに買っとくから、明日にでもいけるけど。 どーする?」


「じゃあ明日で」


「じゃあ、俺はこれで今日は帰るわ。買い物もあるし」


そう言って直ぐに椅子から立ち上がった。


「明日は夜中の2時か3時くらいにこっち来るわ、それまで出来るだけ掃除してファブリーズ、お香焚いて換気の繰り返ししといて」


「分かりました」


「じゃあまた明日」


そう言って玄関を出た。


帰り道、バイクでコーナンに行って必要な物を買いそろえた。


年甲斐もなく、ワクワクしている自分に気付いて苦笑いした。

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