第7話 盛り塩
「この盛り塩はいつしたん?」
玄関を入って真っ直ぐ行くと左にキッチンと食卓、右がリビングになっているのだが部屋の角の部分に盛り塩がしてあった。
「昨日色町さんに言われて帰りに塩1kgのん買ったんですけど、おまじないやったあとにだいぶ塩余ったんで、なんか料理に使うんも嫌やったんで盛り塩したんすけど、まずかったっすか?」
1kgか、そりゃ余るわな・・・
「盛り塩はやり方間違えたら憑いてる物を逆に部屋のなかに閉じ込めたり、下手し喧嘩売って幽霊怒らすこともあるらしいねん」
「思いっきり怒らしてるやん」
奥さんが苦い顔をしながら盛り塩を片付ける。
「ちょっと触って良い?」
盛り塩を受け取って触ってみた。
昨日したわりには湿気て固くなっている。
色も若干黒く変色していて、匂ってみると僅かだが生臭いような妙な異臭がした。
「盛り塩に使った紙は灰皿で燃やした方が良いわ、それから塩はお香の煙にくぐらせて朝10時から2時くらいまでたっぷり4時間は太陽の光にあててからシンクから大量の水でざばっと流した方が良いよ」
「色町さんずいぶん詳しいですね」
恒樹の奥さんが驚いた顔で聞いてきた。
「こういうの好きで結構読んだり見たりすんねん」
なんだか変人に思われているようで居心地が悪い。
っていうか恥ずかしい。
「恒樹、昨日の生姜はまだ残ってる?」
「はい、まだ半分くらいありますよ」
「じゃあまた塩生姜汁作って飲み」
「了解っす」
そう言って冷蔵庫を開けて生姜を取り出した。
「他の部屋も見て良いかな」
奥さんに聞いてみる。
「お願いします」
そう言って案内してもらったが、どの部屋からもこれと言って何もない。
やっぱり原因は盛り塩か。
「今日は、恒樹いない間はなんか変なことあった?」
聞かれて奥さんは少し考える。
「いや、私は何にも感じなかったですけど」
やっぱり恒樹についてまわってんねやな。
3LDKの部屋をじっくり見ていった。
霊感はほぼ無いのだが今まで霊感のある友人と歩いていて耳鳴りがした事があった、後から友人に
「さっきの高架下歩いてるとき耳鳴りしたけどなんかいた?」
と聞いてみると
「女の霊が壁際からこっち見てたで」
と言っていた。
なんとなくショボいレーダーみたいな霊感はあるんかなー? っと思っていたが今は使えてないのか部屋に何もいないのか、耳鳴りも何も感じない。
「なんか分かりました?」
と奥さんに聞かれたが
「さっぱりわからへん」
としか答えられなかった。
リビングに戻ると恒樹はシンクに向かって吐いていた。
「大丈夫かいな」
背中を擦りながら吐いたものを見てみた。
嫌な臭いと一緒に黒い痰のようなものが出ている。
シンクの脇に置いてあったあら塩をシンクの黒い痰のようなものにかけた。
「吐き終わったら残った塩生姜汁で流したあと水でしっかり流してシンクにあら塩ふっとき」
恒樹は頷いて返事をした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます