第6話 幽霊怒った。

仕事終わり、時刻は8時を少し過ぎたころ。


通り道だったので私が恒樹を駅前で拾ってから彼の自宅へ行く段取りになった。


駅前のロータリーでバイクに跨りぼんやりとスマホをいじっていると電車が構内に入ってきたあたりでラインの通知が来た。


「今着きました」


視線を改札口に向けて眺めていると。


「色町サーン」


後ろから声をかけられて振り返ると誰が見ても憑かれているとわかるような酷い顔の恒樹がいた。


「どないしてん? 昨日の今日でえらい参ってるやん」


そんなに大事と思っていなかったのでびっくりした。


っていうかなんでコイツ後ろから来たんだ?


「職場でも散々言われましたよ、ヤバイっすよ。 悪夢は見るし、夜中起きたら天井の隅のほうでおっさんがめっちゃ睨んでくるし。 鏡越しにずっと嫌な気配するしで、マジできついっす」


職場は鏡に囲まれているので1日で相当堪えたのだろう。


確かに気の持ちようかも知れないが昨日とうってかわって恒樹から嫌な気配を感じる気がする。


霊感が無いから気のせいっちゃ気のせいかもしれないが・・・


とはいえ、ジムでハードに追い込んでいても涼しい顔をしている。


熱が38℃を超えても傍目には分からない。


そんなポーカーフェイスの恒樹のまいった顔は初めて見た、言葉に詰まって何も言えない。


「とりあえずお前んち行こか」


そう言ってヘルメットを差し出した。


返事か唸り声か判別しづらい反応をしめしながらヘルメットを受け取った。


一気に不安になりながら、私の愛車の100ccのエイプに股がり二人で恒樹の家へ向かう。


特に二人とも会話をかわさずに家に着いた。


玄関を開けるとおかえりなさいと恒樹の奥さんが出てきた。


「お邪魔します」


恒樹の後ろから笑顔で挨拶をした。


「色町さんお久しぶりですね」


そう言いながら恒樹に視線をうつすと恒樹の顔を見て


「どーしたん?酷い顔してるよ」


と驚いた。


「朝はこんなに酷くなかったん」


驚いた顔の奥さんに聞いてみた。


「しんどそうな顔はしてましたけど」


そう言って眉間にシワをつくった。


「分かるかはわからんけど、とりあえず家の中見てもいいかな?」


「どうぞ、ひながもう寝てるんで静かにお願いしますね、すみません」


と、言って家へあげてくれた。


ひなは娘の名前である。


もう一年生か、早いなー的な世間話でもしようかと思った矢先に部屋に入って直ぐに原因っぽいものを見つけた。

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