第3話 幽霊憑いてた


幽霊を見たのは人生で二度目である。


恒樹がトイレから戻ってくるまでの間、アイツに言うべきかどうか考えていたが考えがまとまる前に恒樹が戻ってきた。


「体はどーなん? どっか重ダルいとかないん?」


適当にかまをかけてみる。


「ないっすね。 筋トレの筋肉痛はありますよ」


ちなみに二人とも共通の趣味が筋トレで一緒に働いていた頃は職場近くのジムで仕事帰りに二人で汗を流していた。


「昨日はどこした?」


「昨日は胸と肩と三等筋っすね」


「右肩と左肩で差ない?」


「右の方が若干効いてますね」


それを聞いて吹き出した。


「どーしたんすか?」


「効いてるんじゃなくて憑いとんねん」


「ナニがっすか? えっえっ⁉ マジで‼」


「霊感がほとんどない人間でも幽霊が見える条件がなんこかあってな。まずは鏡越し、ホラー映画なんかで定番のやつやな。 2つ目は写真とか動画、まぁ、インチキがめちゃくちゃ多いから見分けようがないっちゃないけど。 3つ目、磨りガラス越し。 磨りガラスじゃないと駄目って事もないんやけど、例えば障子越しとかでも見えたりする」


「なんかあれっすね、どっかで聞いたような気もしますけど。 日本昔話とか」


「昔から幽霊の見える条件が変わってないんやろ、鏡越しじゃなくても水に写った自分の後ろにも見えたりな。 まぁ、必ず見えるって訳じゃないらしいけど」


「へぇー」


「前置きが長くなったけど、ほんでや。 今 、恒樹がトイレ行くんに横通った時チラッと見えたわ」


「マジで‼ うわーテンション大分下がったんすけど、あれ? なんで見えたんですか?」


「俺の知ってる霊感ない人間が見える条件の1つに目の端で捉えるっていうのがあんねん。 視界の隅っこって言えばいいかな」


「視界の隅? なんでそれで見えるんですか?」


「なんて言ったらええやろか。 そやな、目の端になんか見えてそっちを向いたらなんもなかったみたいな事ない?」


「はぁ、あるようなないような」


「あれって、視覚で捉えてる部分と第六感で捉えてる部分があるらしくてな。 霊感無い人でも視界の端なら幽霊が見えることがあるんやって」


「へぇー、それで俺が横通る時見えたって事ですか? うわぁ、家帰って掃除して肩にのってんのってとれるんすか?」


「そーやなー、帰りに生姜と塩買って帰って

玄関開ける前に肩越しに塩撒いてから家入り。 ほんでから帰り道は絶対振り返らないこと。 生姜は適当に刻んでコップ一杯半くらいの水で煮込んで煮込んだ汁に塩ぶっこんで飲み」


「へー、なんかいけそうっすね」


「掃除とファブリーズとお香も忘れずにね」


「了解っす。なんか気持ち悪いからもう帰ってそっこーそれしますわ」


「んじゃ今日はお開きやな、エエもん見せてもらったし今日はおごったるわ」


「ええもんて・・・ まぁ、憑かれて初めて得しましたね。 アザっす」


疲れたような乾いた笑い顔。


俺たちは会計を済ませて店を出た。

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