第2話 居酒屋にて。
次の日。
橘恒樹の家が私の職場の近くなので、橘が仕事が終わってから近くの居酒屋で会うことになった。
私の方が仕事が先に終わったので居酒屋で待っていた。
焼き鳥をつまみながら待っていると20分程すると橘はやって来た。
「お疲れっすー」
「おーお疲れ。久しぶりやな。」
そこまで深刻でないのか、疲れている感じはしたが顔はそこまで暗くはなかった。
まぁ、もともと橘はポーカーフェイスだし疲れたり、イライラしていてもあまり顔には出ない。
が、付き合いが長いので私にはなんとなくわかる。
「早かったな?」
「はや上がりにしたんすよ、仕事しててもなんかずっと気配するんすよね」
店員がやって来て飲み物を聞かれるとすぐにビールがやって来た。
それをぐいっと中ほどまで一気にあおる。
「っふぁー、うんま」
「相変わらず神経図太いな、普通もうちょっと参った顔するやろ」
「実際あんま眠れてはないっすね」
「嫁さんと娘にはなんも害ないの?」
彼には今度、小学一年生になる娘がいる。
「言ったらビビると思ってなんも言ってないっすね。 俺の見た感じやったら気付いてるって感じしないですけど、二人とも全く霊感なさそうなんでそのお陰っすかね?」
それを聞いて恒樹の気のせいなのかなと思い始めていた。
図太いわりに恒樹はなにかと気にしぃな性格なのである。
「子供おんのにそんなとこ行くなよ」
「いや全く興味なかったんすけど昨日言ってた地元のツレがなんか最近そういう所行くのにハマってるみたいで、むりくり連れてかれたんすよ」
迷惑なツレだな・・・
「そのツレ絶対独身やろ。どんだけ暇やねん」
「バツイチっすね」
「ロクデナシやないか、後輩は? ってかその二人は異変なんもないの?」
私は親が離婚していて母子家庭で育ったので
バツイチ=ロクデナシというレッテルをすぐに貼ってしまう。
「後輩は独身すね、電話したんすけど、二人ともどーもないみたいっすね」
「ふーん…その二人はしょっちゅうそーゆー所に行ってるんやんな?」
「みたいっすね、月1~2回くらいで」
「えっ? いつ頃からその心霊スポット巡りはしてはるの?」
「さぁ、ここ1年くらいじゃないすかね?」
月に1〜2回、平均1.5にしたら年間で18回か。
「そんなよーさん心霊スポットあんの! ガソリンスタンドより多そうやな」
「なんでガソスタなんすか」
「最近減ってきてるやん、ほんでその二人は
そういう憑かれた、みたいなことはまったくないんや?」
「そーっすね、マジで迷惑な話しっすよ! なんでたまたま行った俺やねんっていう」
「ホンマそれやな、憑かれやすいとかってあるんやな、逆に憑かれにくいもあんのか」
頭の中でぐるぐるとオカルト情報が飛び交っている。
「ただ居るだけって感じなん? 夜中目覚めたらめっちゃ睨まれてるとかキョーレツな金縛りとか精気吸われて死にそうとかはないんや」
「そーっすね、ほんまにおるだけって感じっすね。 なんか簡単な除霊方法とかないんすか?」
「聞いてたらとりつき方がだいぶマイルドな感じするから、家の中綺麗に掃除してカーテンとかカーペットとかファブリーズで除菌して。 それ終わったらお香焚いてみ」
「え?そんなんでいいんすか?」
「100%とは言えんけどね」
「へー⁉ さーせんトイレ行ってきます」
橘が席から立ち上がる。
トイレは店の奥にあって私の位置だと後ろにある。
「どんなタイミングやねん」
へらへら笑いながら横を通る恒樹を目の端で見送った瞬間、全身に鳥肌が立った。
今、目の端でとらえた恒樹の右肩に黒い靄が確かに見えた。
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