後輩が肝試しに行って憑かれたようなので素人だけど除霊してみた。

金城sora

第1話 オカルト好きな先輩、俺。

 7月の終わりごろのクソがつくほど暑い日だった。


 子供たちと三人で日本海へ釣りに行き、3時頃に家に着いて片付けをしている最中に電話が鳴った。


「久しぶりやな、どないしたん?」


 画面に出ていた名前は前に働いていた職場の一つ下の後輩の橘恒樹だった。


「色町さんオカルト詳しかったっすよね?」


「藪から棒とはこの事やな、んまぁ好きなんわ認めるけどなんで?」


「この前地元に帰ったときにツレと肝試し行ったんですけどね」


「もうすぐ30のおっさんが何しとんねん」


 呆れた声で答える。


「いやぁ、ほんでそれが今週の月曜日なんですけど、それから家の中の様子がおかしいんすよ。 部屋の隅っこに誰か居るような気配するし、誰もいない隣の部屋から物音するし」


 オカルトが好きでよくネットや本で見ては鳥肌を立てている私はそれを聞いてすぐに鳥肌が立った。


「こっわ!思いっきりなんかもって帰ってるやん。肝試し大成功やな」


 思わず笑ってしまう。


「いやいやマジで笑い事じゃないんすよ。なんか良い方法とかないすか?」


「いや詳しいって言っても俺もネットで見たり本読んだりするくらいやからなぁ。 ましてや俺おかんにさんざん言われて肝試しとかそういう心霊スポットみたいな場所は行ったことないで?」


 母親には若干霊感があり、そういう所に遊び半分で行くなとよく釘を刺されていた。


 実際に、目の前で金縛りにあって変な声を出している母親を見たこともある。


 そんなせいで心霊に対して人一倍恐怖心もあるが、妙に興味もある。


 我ながら変な距離感だ。


「マジすか、なんか解決法とか知りません?」


「とりあえず詳しく話してみ」


 肝試しの話は要約すると、高校の同級生と二つ下の後輩の三人で山奥の廃墟に行った。


 誰も住まなくなって20~30年くらいの家が6件程の集落と言ったらいいのだろうか?


 そこで家の中を一軒一軒見て回ったらしい。


 特に家の中で騒いだり、悪のりして物を壊したりはしていないと言っていたがそこでナニかをモッテ帰ってしまったのだろう。


 ネットの間接的な体験談じゃなくてじかに当事者の話を聞いていると首を突っ込まずにはいられない。


 その上もともとがお節介な性格でもある。


「聞いた感じじゃよぉわからんなー、明日仕事終わったら会って話ししよか?」


 とりあえずそのときはそこで電話を切った。


「ずいぶん長話ししてたね、誰やったん?」


 妻の明子が聞いてきた。


「恒樹やったわ。相談事やて明日飲みに行ってきて良い?」


「いいよ、珍しいな。 ゆっくりしておいで」


「ありがとう」


 私はめったに飲みに行ったりしないのでこの辺は寛大である。


 明日が楽しみだな。


 そう思いながら、釣り道具の片付けを再開した。

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