2-4 Overflow
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この学園は隣のクラスと離れている。昇降階段1つ分かれている。
正確に細かく言えば、昇降階段分のスペースがある、だ。内郷らが未だ
居るF組と涼窩がかつて所属していたE組との間には、日本が箱型鉄筋コ
ンクリート建築物を量産していた時代の昇降階段があり、E組に行くには
その昇降階段に向かって1度下ってから昇降階段を上らないといけない。
反対側の久慈たちの降格(おと)させられたG組との間には木造校舎の木造
階段。軋むし、音は響くし、所々穴も空いている。区別というか差別に近
い。聞くところに拠れば、それは、現状に甘んじない向上心を育む為、と
かいう建前を掲げてはいるが、その実「その組(クラス)の能力(ちから)では
その場所(きょうしつ)は壊れないだろう」と、学園の運営サイドからの挑戦
なのだ!と、息巻く話もある。まぁ、あくまでも「普通」を望んでいる内郷
にしてみれば、大きなお世話。ダブりや降格もイヤだが、派手なVIP待遇や
必要以上の歓待を求めているわけではないのだから。
D組は、中庭を挟んで北側の丘に扇状に聳え立つA組、B組、C組の
校舎を護るように防波堤か、ダムのように並び建っている自分ら(F組)も
入っている校舎の一翼にあった。
D組のある廊下の片隅で心配そうな眼差しで教室の方を内郷は見つめて
いた。ドア扉はもちろん、廊下沿いの複数の窓もピシャリと閉じられていて、
中の様相を窺い知ることもできない。
そんな状況にすこし苛立ちを見せ始めた内郷の背後から宮古が声をかけた。
「こんなとこでナニすてんだ?!」
「 う わ ぁ あ ☆!? 」
内郷は驚いて、悲鳴にも似た叫び声を上げた。
しかし、すぐさま装いを取り戻し、言葉を返した。
「敵情視察です。ガイアこそどうしたんですか!?」
「敵情視察って・・・・・・。センセが言ってた『クラス対抗戦』って、別に直接対決するんじゃないんだろ。どれぞれのクラスの1学年生、2学年生、3学年生が共同で行って、クラスごとに競い合うんだろ。ナニを競い合うんだかは知らないけど。美人率なら我がF組も上位に食い込めると思うぞ」
「うるさいぞ。バカだいち」
「内郷(おまえ)まで大地って言うかあ?!」
「しっ!」
興奮しかけた宮古を内郷が制すると、内郷の視線の先にあったD組の教室の
あちらこちらから湯気が漏れているようだった。
しばらくすると、教室の扉が開いて廊下や辺一帯を湯気が覆った。その中へ
ドヤドヤと教室から生徒が息を切らせながら吐き出されいるようだった。汗まみれ
で制服はびっちょりで、彼女たちの肌身に絡みつき、所々彼女たちのラインを
あらわにのぞかせていた。
ーーーーその翌日。
F組の教壇横。明るく微笑む炎華の姿があった。
「ただいまぁ〜。てへっ」
席に着いた炎華の傍に怨那たちの輪から抜けたカグラが坐り込み、いった。
「あんたでもD組(あそこ)は厳しかね?」
「全然そんなコトは・・・・・・。ただ・・・」
「ただ?」
「D 9(クラス)で一番イケメンという男子と仲良くなった瞬間クラスの女子は手のひらを返し、クラスの男子は女子に追従して・・・・・・」
少し疲れたように、炎華は笑って見せた。
「でも、久慈クンや宮古クン、彗萌(えも)のおかげで、氷対策は出来てたのが・・・」
言葉の途中、炎華が瞳を脇にずらすと、そこに宮古の姿があり、彼は甘えるように近づいてきた。
「なになにz。炎華ちゃ〜んっ。俺のコトそんなに褒めてくれてるのーz」
「あっ。ガイ・・・・・・」
声を上げて制止させようと内郷が立ち上がりかけた時、カグラの布紐が宮古を天井から吊し上げていた。
「チョーシ乗っとっとかあ?バカだいちー」
「だいち言うなー」
それを見て、炎華はクスっと笑い、言葉を続けた。
「けど、あの空間じゃないトコからじゃんじゃん出されたら、ねぇ・・・。おかげで無事降級(クビ)になったわけなんだけど」
彼らに注目が集まる中、外は不穏な空模様に変わり、爽風は震えていた。
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