13 once upon a time


           13

 

 4万年後、新天地を求めて自律型の巨大な宇宙船で漂流した人類は

この地殻と氷をベースにした未知の鉱物の富んだ惑星に辿り着く。人

類が必要とする資源は地球圏では枯渇して、原因不明ながら膨張して

いく太陽に呑まれていく地球を見捨てた地球人類を祖とする人々は。

 辿り着くまでに幾万と世代を重ね、身体的特徴は大きく変わらずと

も、科学や文明などは進化した。長い長い道のりと時間の中、時には

暴走するものが現れ、混沌に落ちて、停滞したり、逆行したり。

  ようやく辿り着いた250万光年先に観測されていたこの天体

に辿り着いた後も。そして、地球の話は、文献や伝承だけに残る夢

物語となる。

 一方で、重力レンズを使った空間や時間の短縮や歪曲、ベクトルの

反転技術をも手にした。そうした発展した科学技術の他、環境変化に

よって身につけたらしい能力(ちから)を手にした。

 地球とこの天体の時間軸が完全に平行ならば、祖先がこの天体に

辿るのに浪した時間分過ぎていて、もう既に地球は存在しない。しか

し、今、この瞬間のこの天体を観測していた地球は存在していた。3次

元の空間の距離や方向の軸線と、4次元の時間軸の長さや方向は比例し

ない。




 「つまりは、どういうコトですか?」

  困惑している表情にも見える内郷に対し、炎華が優しい口調で口を挟んだ。

「つまりは、いま地球から視えている250万光年離れた位のこの星と、

いま私たちが居るこの天体は、同じ天体ではあるけど、時間も空間も違う

ってコトですよね」

「もう少し解りやすくお願いできますか?」

「んっとね。あー、そうか! いま視えてるのは250万年前のこの星の

光であって、250万年後もあそこにあるかどうかは『いまの』地球には

観測できないのよ。だから、ココにその星があるとしてもぉ、なんも不思

議でもない。ってコトだよね?」

「そやね・・・・・・」

カグラはすこし身をひいて、怪訝な表情を浮かべて、応えた。

 内郷はすこし首を傾げ、続きを促す。

「それで、なんでそんなコト知ってるんですか!? そもそも僕はこの学

園に来るまでの間、宇宙船やロケット等には乗ってませんよ!」

「せやろなぁ〜。そもそも乗る必要がないんやもん。ヒロくん、気付か

んかった?」

すこし苦笑いしながら涼窩が口を挟んできた。

「リニア新幹線は途中下車で、聞いたことない駅名やなかったぁ?  そ

っから乗り換えに更にエスカレーターで下に降りるなんてヘンやと思わん

かったぁ?」

「そりゃ、どこぞの秘密基地みたい!と、ウッチーは心躍らせてたよね♫」

涼窩を遮るように怨那が割って入ってきて、内郷の方を向き、微笑んだ。

「そんな恥ずかしいコトするわけないじゃないですか」

内郷はそう目を逸らしながら、いった。




 



 とっさに内郷はカグラの方を視た。なんだか苦笑いしている様に微笑んでいる。怨那はもうちょ

っと明るい感じで微笑んで、内郷にウィンクした。炎華は視線に気がついた瞬間、

俯き加減に目を逸らした。

 内郷はすこし不満げな感じで言葉を並べた。

「授業に役に立つって・・・。それは、もはや勉強じゃないですよね?」

「ヒロくんっ。なーに言うてるんや! 鉄棒の逆上がりも、サッカーでシュート

 決めるのも、ボールの投げ方覚えるのも、同じ『勉強』いうんちゃうの?!」

内郷に背後から抱きついてきた涼窩は、そう言うと、顔を内郷に向け、笑った。

 驚きの反応を内郷が示す前に、怨那が割って入った。

「そんなコトより、なにウッチーに抱きついてんのよっっ」

 怨那は涼窩を引き剥がして、放ると、内郷に甘えるようにすり寄った。けれども、

そも前にもう涼窩が反対側の内郷の隣に居た。

「ま、これは課外授業?っちゅうよりバイトやな。ポイントつくしぃ」

 睨み合う怨のと涼窩。間に挟まれた内郷は苦笑いすると、さっき観た光景の

方向の空を見上げた。







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