10 yesterday
10
内郷とカグラは屋上庭園にいた。緑の樹々が周囲に並び立ち、S字の
太めの小道がそれを貫くように、延びている。樹々の群生を抜ければ、
そこには広場があり、丘があり、白やウッド調のベンチがそこあそこ
に置いてあり、その周りをかわいしい花々が咲き誇っている。木の端
々から覗かせている高層ビル群の上部のみの姿がなければ、童話に出
てくる森の中かと勘違いしそうな風景だった。
内郷とカグラの二人はとりあえずベンチにすわった。そこで、すこ
、し落ち着いた内郷はカグラに、訊いた。
「さっき『やっぱり』って言ってましたけど、アレってどういう意味
なんですか? 普通は見えてないんですか?」
「ご名答〜」
カグラは悪戯っぽく、笑うと、
「自分が『普通ではない』と言われてるようでイヤ?」
内郷を覗き込むように見て、いった。
詰め折の学生服やセーラー服姿の男女でにぎわう教室。カグラの中学時代。
そんな中、カグラのグループを見ながら、青ざめている少女がいた。そして
その後も、少女はカグラ達のグループに接触すると、声や悲鳴を上げたり。本
当はカグラの背景に見えたモノが蛇に見えていたらしいのだが、他の生徒や教
師たちには見えることはなく、結果。それをキッカケに彼女はいじめのターゲ
ットとなり、ついには自殺未遂をさせるところまで追い込んでしまった。
似たようなコトは小学生時代もあった。
(自分ではなく、自分以外の誰かが、コレのせいで傷つくのはね・・・・・・)
そんな矢先、祖父の遠縁の親戚の家に引っ越した町で、ココの付属中学校
へ編入してこないか? と打診があった。どうせ不登校児の受け入れ施設程度
だろうと思っていたカグラには、この学校のレベルは衝撃的だった。そして、
なによりも衝撃的だったのは、転入先のこの街だった。
最初は、街のすれちがう誰もが「かわいい」「かわいい」と言うので、ま
あ、そこそこにはイケるだろうと自負していたカグラは、自分の外見を言わ
れているのだと思っていた。
------そんなある日。
「お嬢ちゃん、かわいいね!」
歩道を歩いてたカグラに、軽トラっぽい車両の窓からハチマキを巻いた
おっさん風だが、ラメのようなキラキラしたスーツを着こなしている男性
に声をかけられた。
カグラはちょっと鼻にかけたように、微笑む。
「そうでしょ♡」
すると。
「もぉしかして、みんなお嬢ちゃんの周囲の可愛いやつばさ、見えてねえ
っと思ってるんじゃねえよな?」
「えっ・・・・・・」
すこし戸惑いカグラはちょっと顔を紅潮させた。
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