話が繋がって来る流れが王道に熱い。ヘタレスケベ少年の愛と大冒険

序盤はなんかネトゲ世界の描写がふんわりしてるなあ、と思ったけど、二章で思ってたより大きな世界が見えて来て、終盤の最高難易度ダンジョン最深部の光景でももう少し大きな世界が見えてくる。アレの模様の解釈って現実でも国によって違ったと思うんですけど、そんな感じに世界を表現するの上手いなあ。

途中で軍勢に加わったり、高難易度ダンジョンの意外な最後の部屋の仕掛けだったり、ラストの市街戦だったり、これまた思いの外話の引き出しが多く、この知識の豊富さと世界の広さはクルミの時間の時から感じる風さん節だなと思います。(というかスワンヒルだの妖精ルルルだの、クルミの時間と関連のあるワードが出て来ますね)

全体的に話が繋がって来た時の流れが熱い。ミュールとかコルベットとかはともかく、三平太とかミホロ辺りはこんなカッコよく、ミホロは変に恋愛っぽくならないままちょっと泣かせるくらいに生きてくるとは思わなかった。あとルークは他のキャラに比べると性格控えめな後衛だけど、不意打ちでくるカッコイイ活躍がとても良い。

主人公のカズヤ君は成長もあるけど最後まで割と人間小さいし(作中でも自他共にケツの穴の小さい奴と言われている)、スケベだし、ちょっと挙動もキモいしで、男の子が憧れるヒーローでもなければ、女の子が思わず黄色い声を上げちゃう王子様でもないでしょう。しかしそこに自覚症状はちゃんとあるし、人質に取られた時の挙動やら、敵側にいる軍勢との交渉の後ろ向きカッコいい感じはスーパーヒーローではないカズヤ君じゃないと出せない味があるし、ラストバトルや時折冴え渡る頭脳はちゃんとカッコいいです。そんなわけで私はそんなカズヤ君が好きです。カズヤ君は美少女とかレイカちゃんに言われないと嬉しくないかもしれないけど。

全体的に読む側を楽しませようとする、作者の出来る限りを出して綺麗にまとめようとする気概を感じてとても面白かったです。