僕は彼女の召喚獣 

第一章 僕はレイカの召喚獣

1 麗華とレイカ 

 白鳥麗華しらとりれいか


 長くつややかな黒髪をなびかせ、スタイリッシュに制服を着こなす高校二年生の美少女。

 偏差値80を越え、英検1級、聡明なだけでなくやさしく明るい性格で、生徒会長も務める、まさに非の打ち所のない女子高生だ。

 さらに極め付けは、相手の心臓を鷲掴みにして虜にするその笑顔。もはや魔力としか言いようがない。それらが生まれ持ったものだとしたら、ある意味恐ろしいひとだ。


 一方、僕といえば、学力は並以下、運動は苦手、根暗で、容姿もその性格に相応……早く大人になって、せめて鼻筋だけでも整形したい。

 そう、麗華とは全てで対角線をなしている僕は、麗華と同じ空気を吸うこと、同じ教室にいることさえ許されない雰囲気だ………が!


 彼女との接点が一つだけある。


 RPGゲーム『ストレイン・ワールド(迷走世界)』



★★★★★


「モフモフ! 滅殺の斬撃を! 」


 深淵の森のフィールドで、聖騎士レイカは僕に命じた。

 モフモフと可愛い名で呼ばれているが、今の僕の姿はレイカの三倍はある牛頭人身のミノタウロスなのだ。


「グフオー! 」

 僕は叫んで、右手の巨大な斧を振りかぶり、眼前のガーゴイルに振り下ろす!


「ブォーーン!」

 

 空を切り裂く閃光の切っ先!

 唸りをあげる重低音!

 

 その斬撃はガーゴイルの頭上に命中し、相手は悲鳴を上げるまもなく、一撃で霧散した。


 レイカは満足そうに微笑むと、剣を鞘におさめ

「スマール」

 そう唱えると、僕はバスケットボールほどの毛玉に小さな手足の生えた、わけのわからない動物(?)に変化へんげする。


「あああーー、かわいい! このモフモフたまらないのよね! 」

 そう言って、毛の玉の動物(?)になった僕を抱きかかえ、ほほスリして撫で回す。この、豊満な胸に抱かれるは、役得だが……


 僕はひたすら、彼女の召喚獣(下僕)として日々奮闘している。


 ここでの彼女は、RPGゲームの中に一時的に転移し、そこのスワン・ヒルというエリアから抜け出すことが出来ず、二百年の間一人でもがいているのだ。



★★★★★


 きっかけは、放課後たまたま教室にもどったとき、向かいの校舎の生徒会室に一人残っている麗華が目に入った。

 彼女はスマホを見ていたようだが、そのあと突然姿が消えた!。


「ええー! 」


 呆然としていると、いきなり僕のスマホがなり始めた。


 取り出すと、今ハマっている「ストレイン・ワールド」というRPGゲームから、メッセージのようなものが届いている。

 たまたま見つけたゲームのアプリで、モンスターを倒し、剣士や魔道士たちと一緒にダンジョンや城を攻略して冒険する、一般的なRPGゲームだ。


 どうも古くからあるゲームのようだが、人気がないのか、攻略サイトもなくSNS上でも話題にもあがらない。たまたま見つけたゲームで、意外と面白いのだけど、他にだれもやっているものはいない(というか、友達のいない僕には、聞く宛もない)……ようだ。


 その画面に、質問が出ていた


『召喚に応じますかと聞いたとき、あなたはNoと答えますか? 』


 下の選択ボタンには[No]と[いいえ]のタブがあり、ぼくは胡散臭うさんくさいアプリは、拒否ることにしているので、もちろん「No!」


 って……あれ、このタブどっちも、否定じゃないか


 すると、スマホが急に光だし、周囲が強い光彩に包まれ一瞬気を失った。

 薄れゆく意識の中で「なんでだ、Noと言ったはず……」


 でも、よく考えれば否定の否定は……肯定?

 

 気がつくと、僕は荘厳な宮殿の広間にいた。

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