9 決戦! 通天回廊(3)


 八十階層付近からの敵は、バハムート、ヒュドラ、ドラゴン、サラマンダーなど神獣クラスが一度に数体で襲いかかってくる。

 どいつも一体で国一つを滅ぶ力をもつ、超神獣だ。

 ステータスはマックスの100以上の限界突破だろう。


 一方、僕はミノタウロス、強いモンスターだけど、やはり敵の方が格上で、レイカの補助くらいにしかならない。僕もレイカと一緒に前衛で戦える能力があれば、かなり助けになるだろうけど、前にでれば一撃でやられてしまう。


 実質、レイカ一人で戦っているようなものだ。


 そんなレイカは、文句の一つも言いたいだろうが、僕を励まし、元気づけて戦っている。

 正直、不甲斐ない自分が腹立たしい。


 ◇九十階層……


 次に出てきたのは、火炎を吐くトカゲの化物サラマンダー………の上位種のキングサラマンダーが三体!


 僕が一体を食い止めている間に、二体をほふったレイカだが、さすがによろけている。僕も頑張っているが、何度も炎を浴びてしまう。


 さすがにサラマンダーはきつい! 

 追い詰められ、踏みつけられ、トカゲのしっぽと前足でボコられている僕は、たまらず 


「グホホ、グホ、ゲホカ!(早く来て、レイカ!)」

 

 悲痛な叫びをあげたが、レイカを見ると片膝をついて肩で息をしている。少し休ませてほしい、といった感じだ。


 その間も、容赦ない火炎と巨大な腕の攻撃、さらに硬い皮膚は僕の斧ではかすり傷程度しか与えらない。

 レイカは、どうすうることもできない僕の様子を見て立ち上がり、かなり辛そうだが僕を助けようと。


「モフモフ! 滅殺の斬撃を撃ってすぐに左に回避して。そのすきに私が、中央から連撃で仕留める」

 よろけながら、剣を構えるレイカ。

 ううーー、本当に(ごめん!)


「グフゥオー」

 言われる通り気力を振り絞って、強引に斧を撃ち込んだ。

 なんとか、相手に突き刺さるが、致命傷にはならない。


 その時、鞭のようにサラマンダーの爪がもろに脇腹に食い込んだ

 ………脳髄に達する激痛!


 だけど、ニ秒……相手の動きを止めた。


 レイカの剣技の前で、二秒もの隙を作ってしまうのは、確実な死を意味する。


 とともに、僕の頭上からレイカが飛び込み。

 ロングソードの切っ先が無数の円弧を描き、連鎖して火花散る、多重連撃を放つ!

 相手は動くことすらできず、反撃のいとまなど全くない。

 凄まじ威力だが


 多重連撃……


 これまで、レイカは神獣レベルでもほぼ一撃で倒してきたが、このところ多重連撃を使う場面が多くなってきた。

 相手が強いのか、それともレイカが相当疲れているのか。


 ただ、くどいようだが、神獣はその一体で一国を亡ぼす力をもつ。それを、これまで百体以上は倒してきている。

 まさに、無双、チート、ありえない。


 最後の一撃を刺突すると、サラマンダーは霧散し、レイカはその場で立ちすくみ肩で息をしている。

 そして、振り返ったレイカが、僕をみて驚いた


「モフモフ‼︎ 」


 どうやら、レイカの心配をしている場合ではなさそうだ。

 脇バラに食い込んだ敵の爪でかなり出血している。HPがほぼ0だ。レイカが急いでポーションを渡してくれたが、間に合わない。


 オラは死んじまった………

 

 ………が、天使の羽でよみがえった。


 目覚めると、レイカが心配そうに

「ごめんねモフモフ、この先無理してはだめよ。天使の羽は、この塔では二回使えない。蜂の抗体と同じように、一回目は大丈夫でも二回目はだめなの。それと、この塔はどの外界とも接していないから、召喚することも、召喚を解くこともできない。だから、召喚獣は二回死ぬと完全に消滅する」


 ……そうだったのか。


 召喚獣はモンスターカプセルのようなアイテムから出す場合と、異世界から呼び寄せる場合がある。モンスターカプセルなら戻れるが、僕のような異世界からの召喚は、圏外でダメなのだろう。


 でも、この塔がどの世界とも接していないって……ここはどこなんだ?


 召喚獣の僕には聞けないし、レイカも話しはしなかった。


 その後も僕とレイカは突き進んだ。

 限界ギリギリの、一瞬も気を緩められないきわどい戦いが続く。

 僕はレイカの盾となり、剣となり、ボロボロになりながら戦った。


 そして、なんとか百八の階層に至ったのだ。


 真のラスボスの扉の前、レイカは座り込んで最後のポーションを飲んだ。レイカのゲージは見えないが、充分な回復はできていないようだ。

 様子からして、HPは一割程度しか残っていないだろう。


 すると、レイカが突然、思わぬ事を言う


「モフモフ、ここまでで、いいわ」


 ええー!!

 何を言うんだレイカ!


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