エピローグ【愛しのアメリカンドッグ】②
コンビニを出て、ケーキ屋で少し高いケーキを買った。手提げ袋の中の小さな箱には、おもちゃみたいにかわいい、ブルーベリータルトが入っている。ロミオが夢にさえ見たタルトだ。機嫌取りには、これくらい必要だろう。
ロミオは、退学届のドッキリを黙っていたことを怒っている。ぼくは何度も話そうとしたはずだし、聞かなかったのはお前じゃないかと、考えれば考えるだけ、腹が立つ。
だけど、きっとぼくは、熱を出して寝込んでいる彼女を見たら、結局責めることはできない。ロミオは、朦朧とする頭を駆使してぼくを罵るに違いないんだ。
そんな彼女を想像したら、なんだか、いじらしささえ感じるし……。はっきりいえば、そういうところが可愛いんじゃないかと。
今は、アメリカンドッグの甘さがちょっとだけ愛おしい。
あまりにカッコ悪かったあの二月八日。あの日の話をすることは、なかなかないだろう。いつか、いつものこの道を歩きながら話すことがあるのかもしれないが、それまではお互い、忘れたフリをしてしまうに違いない。
さて、公園を突っ切れば、ロミオの家まであとちょっとだ。
ぼくはケーキの箱を一瞥した。そして、思い切って歩みを少しだけ早め、小走りをした。
誰の目から見てもわからない程度に、だけれど。
〈了〉
月曜日を殺しにいこう 肯界隈 @k3956ui
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