第58話
「今は、それしか言えない。道満の使った術がわからないことには、こちらも対応の仕方が決まらないからな」
「……あの子は、何も悪いこと、してないのに……?」
「道満に目をつけられたのが運の尽きだ。でも大丈夫。凛々花ちゃんは、絶対におれたち陰陽寮で守るからね」
運の尽き。
そんな言葉で、片付けられてしまうのか。
「とりあえず、保也。夢見の呪いをかけてあげて。これ以上、夢に感情されるのは精神衛生上よくない」
「合点承知〜」
保也の手が、凛々花の肩に触れた。
「夢は精神に直結する。りんちゃん、覚えておくといいよ」
保也の霊力が流れ込んでくるのを感じる。それは柔らかく、凛々花の皮膚の下を走っていくようだった。
「……今更なんですけど、詠唱とかってないんですか?」
「うん? 詠唱?」
「な、なんか、ありません? 漫画の陰陽師とかって」
「『急急如律令』のこと?」
「あ、そんなやつです!」
「吾は言わないかなー。あ、でも使う人もいるよ。呪文も、絶対必要ってわけじゃないけど、あったらわかりやすいよねってくらい」
「軽くないですか?」
「そんなもんよ」
パッと保也が手を離す。じんわりとした温かさが残った。
「晴明さまー。俺たち、事情聴取受けなきゃダメですかね」
「ダメだろうな」
「えー」
明近が口を尖らせる。晴明はそれを見て苦笑いをした。
「一応、今話したことと同じことでいいから、泰たちにも共有してあげてくれ」
そう言うと、晴明は一本に編まれた髪を跳ね除けて、立ち上がる。
「少々外に出過ぎたみたいだ。おれは帰るよ」
「また会いに行くからな! 晴明!」
「保也は来なくていい」
保也を跳ね除けた晴明は、ゆっくりとした手つきで凛々花の頭を撫でた。
「何かあったら地下に来るといい。地下ならおれも、多少は術を使える」
「あ、はい……」
「じゃあな」
そして、晴明は天文部を去って行った
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