第37話

 陰陽寮ビルのすぐ近くにある、二棟隣接した寮。片方が、凛々花がこれから暮らす『コーポ・しじょう』だ。


「違う方は誰が住んでるんですか?」

「あっちは『シャトー・さんじょう』。陰陽頭や博士が住む建物だよ」

「なるほど」


 保也や明近はあちらにいるということか。

 寮の中に入ると、突き当たりに大部屋が一つ。テレビやソファーが設置されていて、奥にはキッチンもある。


「ここは共有スペース。二階が主に男子が住んでて、三階は女子の階になってる。行き来は個人の自由だから、なんかあったら呼んでくれ」

「虫が出るとよく呼ばれるよねー」


 隼がにまにま笑いながら言う。


「うん、そうだな。だから、まあ力仕事とか虫とか、必要になったらいつでも呼んでくれて構わないよ」

「あ、ありがとうございます!」

「じゃあ、累に部屋まで案内してもらってくれ。その間に、俺たちで夕飯準備しとくから」


 とんと背中を押される。すかさず累がその手をとる。


「こっち」

「あ、うん」


 そのまま二人は手を繋いだまま、階段を登った。

 三階に到着すると、一番階段に近い部屋のドアが開けられた。

 思っていたより広い部屋。両サイドにシングルベッドと学習机が置かれていて、真ん中にはローテーブルが置かれている。


「向かって左側が凛々花ちゃんのスペースね」

「うん……見たらわかるかな……」


 なぜなら荷物の山ができているから。

 必要最低限のものだけ、母親が詰めて送ったのだろう。ダンボールは十個。服が多い凛々花にとって、それでも全て入っているかは不安なところだ。


「荷解きは後でいいよ。みんな、手伝ってくれると思うし。部屋着に着替える?」

「このままでいいかな。部屋着探すってなると、これ一回全部開けなきゃだから……」

「そっか。じゃあ僕も着替えなくていいや。荷物置いて行こ」


 まあ、パジャマ探すから、どうせ今日中には一回開けなければいけないのだけれど。

 綺麗にメイクされたベッドの上に荷物を置く。累も、持っていたカバンを学習机に収納されている椅子に置くと、先に部屋を出た。凛々花もそれを追いかける。


「トイレと簡易キッチンは各部屋にあるから、自由に使っていいよ。お風呂は一階に大浴場があって、昼間以外は開いてる」


 トントンと、階段を降りる音が響く。


「個室以外の掃除は業者さんがやってくれるから問題ないんだけど、個室の掃除は自分たちでやらなきゃだから、後で担当決めよ」

「うん、わかった」

「今日の夕ご飯何かなー」

「忠幸さんが作ってくれるんだっけ?」

「そう、いつも持ってきてくれるの。忠幸さんには会った?」

「うん。すごい、女子力高い人だよね」

「ねー。僕、メイクとか興味ないけど、料理は教わりたいと思うよ」


 共有スペースについた。累がドアを開けて、中へと促す。

 中に入ると、クラッカーの破裂音が耳を突き刺した。

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