第33話

「全く、ゆきちゃんも扇ちゃんも子供じゃないんだからあんなごね方しなくても……」

「あ、あはは……」


 無事に暦部から凛々花を取り返した保也は、ひらひらと角が焦げた長方形の紙を揺らす。そこから放たれた雷を見た後の凛々花は苦笑いするしかない。


「霊符って、雷出るんですね」

「うん。こう言う、攻撃する系のものは呪符って言われたりもするけど、総称としては霊符って呼ばれてるんだよね」

「攻撃する系……」

「この紙が、人を傷つける呪いになるか否かだね」

「難しい……」

「ははは、そこもこれから勉強だなあ」


 エレベーターが到着する。それと同時に、終業を告げるチャイムが鳴った。


「じゃ、勤怠切って寮帰ろうか」

「そうだ、寮だったんだ……」

「得業生が入る寮は、陰陽師の子たちと一緒だから大丈夫よ。隣の寮に吾も明近もいるから、何かあったらおいで」


 下駄箱の上にある機械に指を入れると、その隣にあった画面に保也の名前が表示された。


「……朝、勤怠入れてないと思うんですけど……」

「ん? それは明近が訂正報告したから大丈夫だよ。吾もテンション上がって忘れたから一緒〜」


 ピースサインをする保也を見て「いいのか……」と納得しきれないまま、自分も指を通す。


「うん。明日からは忘れないようにしようね、りんちゃんも吾も」

「はい」

「よし! じゃあ帰りの準備しようか!」


 そう言って、保也は下駄を脱いで畳の上に上がっていった。凛々花もそれに続く。


「明日からはノートと筆記用具も持ってきた方がいいね。津森と勉強会があるし」

「時間ってどうなったんですかね……?」

「始業してからの一時間と終業前の三十分で取ってあるよ。場所は図書館。明日の朝は吾が送ってくけど、それ以降は各自って感じかな」

「わかりました。早く来た方がいいですか?」

「ううん。今日と同じ時間でいいよ。どうせ明近は遅刻ギリギリだから」

「はい。じゃあ、明日は真っ直ぐここに来ます」

「迷子になったら迎えにいくから連絡してね〜!」


 帰りの準備が終わって立ち上がった時、エレベーターのベルが鳴った。誰かが天文部に到着したらしい。

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