第28話
許可が出たので、凛々花はもう一度メッセージを見る。差出人は出月、雅も入っているグループに送られてきていた。
出月の吹き出しには「図書館の利用許可が取れたのでそちらでやってくれ!」と言う文字。凛々花が了承を送ると、既読は二つつく。一つは出月のもの。そして、もう一つは、雅のもの。
しかし返事は出月からしか来ない。
「……」
「りんちゃんどうしたー?」
「あ、いや……」
保也に返事をしようとした時、また通知音が鳴った。視線を落とすと、また出月からメッセージが来ている。
内容は、「雅も了承しているよ」と。
それも出月が言うのか。
「……津森さん、返事してくれないんですけど……」
「そうなの? 出月に言うか?」
「あ、いや、それは大丈夫です! まあ、既読はついてるし、あっちはあっちで話が伝わってると思うので……」
出月からのスタンプで終わったトークを、もう一度見る。
既読は二つ。けれど、話をしているのは出月と凛々花のみ。
グループでも話をしてくれない雅に、今後自分から話しかけなきゃいけない時はどうしようと、一抹の不安を覚えた。
「個人トークに何か送ってみれば?」
「それこそ返ってこない気がします……」
「確かにー。スタンプも返ってこないのかえ?」
「そうですね。菅原さんが代弁してくれてる感じです」
「手が掛かる子だね〜」
というか、こんなんで本当に勉強会ができるのか。
「……保也さん、勉強会って本当にやらなきゃダメですかね」
「うん? まあ、吾がつきっきりで教えられればそれがいいんだろうけど、道満の動きも怪しいしなあ」
「津森さん、本当に教えてくれますかね……」
「あー、まあ、聞いた感じやればできる子だから……無理そうなら吾が陰陽博士に進言するから言ってね」
今からでも他の人に、と頼もうと思ったが、保也は一回やってみろと言う。
不安が一抹では収まらなくなってきた。そもそも、凛々花はほとんど何もわからないのだ。それを、メッセージ上でも話ができない人が教えるなんてできるのだろうか。
凛々花は頭を抱えた。前途多難。
「じゃ、りんちゃん。ちょっとした仕事やってみようか」
保也はパチンと手を打って、にっこりと笑った。
「これ、暦部に渡してきて!」
またお使いである。
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