第22話

「陰陽博士直々のお達しだよ」

「そ、そんなこと言われたって…」

「いーじゃんつもりん星見上手いんだから」

「上手いだなんて…」

「つもりんが星見でいい作戦立ててくれるから、俺や出月にいが上手く立ち回れるんだよ」


 隼が微笑むと、向かいの奈那子がムッとした。


「私やさねちゃん、涼香は?」

「ご、ごめんて! 全員! 全員な!」


 奈那子と隣に座るさねちゃんこと藤野累、またその隣の賀茂涼香が揃って半眼になる。


「さねちゃんを忘れるとか、隼の脳みそは腐ってるの?」

「そこまで言う⁉︎」

「ね〜? 可愛い可愛いさねちゃん」

「ひう……」


 涼香がぎゅうと抱きつくと、累は身を固くした。


「涼香。累が怖がってるだろう。やめなさい」

「出月にいもわたしからさねちゃんを奪おうとするの……?」

「そういうことじゃない」


 渋々離れた涼香は、おさげを結んでいる黒いリボンをくるくる弄ぶ。


「みんなそう……わたしからさねちゃんを奪おうとする……この間の事務員もそうだった……許さない……許さない……」


 ドス黒いオーラを放ち始める涼香。徐にとりだした藁人形にブスブスと針を差し始めるのを見て、凛々花は仰け反った。


「すまんすまん。発作みたいなものなんだ、気にしないでやってくれ」

「無理では…?」


 からりと笑う出月に、凛々花は心の中でもう一度「無理では?」と呟く。陰陽師たちはキャラが濃すぎる。保也や明近もなかなかに特徴的な性格をしていたが、陰陽寮にはそういった選抜基準でもあるのか。


「そうそう。勉強会はどこでやるんだ? ここを使ってもいいが、騒がしいからな。もっと静かな所の方がいいだろう」


 腕を組んだ出月は首を傾げる。ポテトチップスの最後の一枚を摘んだ隼は、はっとした。


「図書室とかは? 最近はなんでも全部データベース化されてるから、行く人ほぼいないし」

「なるほど、確かにそれはいいな」

「え、ほ、本当にやるの…?」

「当たり前だろう。雅。お前はそろそろ外部との交流を持った方がいい」

「ぐう…」

「お。ぐうの音が出たな」


 ドッと陰陽師組が笑う。凛々花も釣られて笑えば、雅と目が合った。

 が、すぐにさっと逸らされる。


「じゃあ、スケジュールは俺と保也さんで調整しよう。決まり次第、二人に伝えるよ」


 そう言って、出月はメモ帳にサラサラとメッセージアプリのアイディーを連ねた。


「これ、雅のやつな」

「僕の⁉︎」

「連絡手段はあった方がいいだろう?」

「む、むり、タイマンはむり! せめてみんながいるグループ作ろうよ…!」

「確かに、雅に女の子とのタイマンメッセージは早いか。じゃあ俺も含めたグループを作ろう。それでいいかな?」

「あ、はい! お願いします!」

「いい返事だな。今スマホ持ってるか? 早速連絡先交換しよう」


 出月に差し出されたスマホの画面からキューアールコードを読み取る。名前の下に出てきた追加の文字をタップすると、すぐに「よろしく!」というスタンプが送られてきた。

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