第15話

 泰は安心させるようににっこりと笑って立ち上がった。


「牛乳は飲めるか?」

「あ、はい。飲めます」

「泰、吾も〜」

「ぼくもぼくも!」

「はいはい。芳昌も飲むだろ?」


 全員の視線が芳昌に向くと、彼はピアスをいじりながらふいと視線を逸らした。


「あー、うーん、…うん」

「どうした?」

「いや…別に」


 何かを誤魔化すようにへらりと笑った芳昌も、泰の後を追うように立ち上がった。


「僕も手伝うよ」

「本当か? ありがとう」


 二人が襖から出ていくのを見送ると、残されたのは三人。

 じっと良平が凛々花を見つめる。


「…な、何」

「いや? 道満の呪詛受けたのに、ピンピンしてんなーと思って。怖くねーの?」


 怖くなかった訳じゃない。現に、化粧をしていてもわかるほど顔は青くなっているようだし、指先の体温もいつもより低い。


「…怖かった…」

「えっ、ちょ、おい」


 あのままだったらどうなっていたんだろうか。足に呪詛をかけられたままだったら。道満は、凛々花の体を乗っ取るつもりだった。ならば今回の呪詛も、そのような効果のものだったのだろうか。


 何もわからない。呪詛どころか、自分の部署の天文のことすらよくわかっていないのだ。 自分の不甲斐なさにボロボロと涙が溢れてくる。良平はぎょっとしているし、保也は口元を袖で押さえながら目を丸くしていた。


「や、保也! なんとかしろよ!」

「おお怖かったの〜、ほれ、もうすぐ二人が戻ってくるから、落ち着きなさい」


 よしよしと頭を撫でられて、さらに涙が溢れてくる。泣き止む様子のない凛々花に、良平は焦っていた。

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