第12話

 保也と話しながら昼食を食べ終わると、昼休みが終わった。凛々花は保也に引きずられるようにして、天文部のフロアを出た。


「あの、明近さんは…」

「どうせナンパが上手く行ったのよ。当分帰ってこない」

「い、今からどこに行くんですか? 私たち…」


 乗り込んだエレベーターが上昇する。目指すのは最上階。


「今から行くのは最上階。陰陽頭が座すフロアよ」


 陰陽頭。晴明に次いで偉い人で、陰陽寮を仕切る実質トップだ。


「さっき汝が遭ったのは蘆屋道満と名乗っていたな?」

「はい」

「あれはな、我ら陰陽寮の敵なのよ」

「敵…」


 そう、と保也は頷く。


「昼休み中に陰陽頭宛で報告を上げた。汝が次の器として狙われていることも含めて、な」

「え、いつの間に?」

「吾、人間じゃないからさ、そのくらいちょちょいのちょいよ!」

「そういう問題…?」


 確かに、彼は「君に乗り換えよう」と言っていた。「次の器」という言葉から察するに、蘆屋道満も平安時代の人そのままで、晴明とは違って他の人の体を乗り継いで生き残ってきたのだろう。


「そしたら幹部会議に召喚されたよ! まあみんな個性豊かだけど頑張ってね!」

「…え? 幹部会議?」


 保也は振り返ってピースをする。凛々花はぽかんとそれを見つめた。

 幹部会議。幹部会議? 幹部が集まる会議に、今日入ったばかりの私が召喚された?


「…行かなきゃだめですか?」

「うん。当事者だからね。だいじょーぶ! 吾も隣にいるから!」


 晴明と面接したり、幹部会議に召喚されたり。新入りには荷が重い。凛々花は不安に押しつぶされそうな心臓の辺りをキュッと握った。


「さ、着いたぞ。幹部殿たちはもう集まっている。と言っても、どうせ明近は来ていないだろうがね」


 大きな襖。その向こうには、幹部が集まっている。

 保也の小柄な手が、襖に手をかけた。巻き込まれてしまった以上、逃げることはできない。凛々花は短く息を吐いて真っ直ぐ前を向いた。

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