第11話

「…はあ、またか」


 コンビニから二人が帰ると、ちょうど昼休みのチャイムが鳴った。真っ直ぐ天文博士の机に行くが、既に明近の姿はない。


「天文博士はどこに?」

「チャイムがなった瞬間出て行きましたよ。いつものでしょう」


 近くの職員に明近の行方を聞くと、そんな答えが返ってきた。保也はコンビニで買ってきたものを広げながらため息を吐く。


「あの女たらしが…」

「あの、明近さんはどこに行ってるんですか?」


 凛々花の問いに、保也は苦虫を噛み潰したような表情をした。


「外よ」

「外?」

「彼奴はお昼休みになるとナンパしに出るのよ。全く…」


 買ってきたものを広げ終えた保也は、次いで棚から救急箱を持ってきた。凛々花に座るよう促し、救急箱から包帯を取り出す。


「見た目が悪くなってしまうが、霊符を貼るから包帯も巻かせておくれ」

「あ、はい。ありがとうございます」


 大人しく足を出すと、保也の小さな手に握られていた霊符を貼られる。


「それって、保也さんが作ったんですか?」

「うん。りんちゃんもすぐに作れるようになるよ、簡単だからね」


 右足に包帯を巻き終わった後、保也は上目遣いに凛々花を見つめた。


「痛い?」

「…ちょっとだけ」

「ごめんなあ。もっと早くに気づければよかった」


 形の整えられた眉が下げられる。


「あの、人? は、誰なんですか?」


 左足にも霊符が貼られる。保也は目を伏せたまま答えた。


「蘆屋道満。晴明のライバルでヤミ陰陽師集団『はりま蘆屋塚』の総帥よ」

「はりまあしやづか…? ヤミ陰陽師?」

「ははは、混乱してるなあ」


 両足の痛みは、霊符のお陰でほとんどない。きちんと包帯が巻かれた両足を横に流して、保也から手渡されたてりたまのサンドウィッチの封を切った。


「ヤミ陰陽師っていうのは、吾等のように陰陽寮に所属していない、非公式な陰陽師のことよ。その集団の一つが『はりま蘆屋塚』。さっき遭った蘆屋道満が総帥をやってる」


 保也が生クリームたっぷりのフルーツサンドを頬張る。

 

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