第7話

「君、晴明様には会った?」

「はい。会いました」

「なんて言われた?」


 凛々花は少しだけ言い淀んだ。「いい筋行く」と褒められはしたのだが、それを自分から言うのは、と。口をもごもごさせる凛々花を見かねて、保也が口を挟んだ。


「人並みかそれ以上、とな。筋がいいとも言っておった」

「へえ! 得意なのは? 呪詛? 星見?」

「いや、知識はほぼないそうだ」


 明近はぎょっとした顔で凛々花を見つめる。見つめられた凛々花は気まずくなって視線だけ逸らした。


「まあ知識なんてこれからつければいいか。君はとりあえず、俺たちに着いて回って勉強してくれればいいから」

「えっと、それが仕事? ですか?」

「うん。ちょっとした雑用は頼むかもしれないけど、まずは陰陽寮や陰陽界の知識をつけるところから初めてほしい」


 凛々花が頷くと、明近はにっこりと人懐っこく笑った。

 席に案内される。と言っても、天文博士の席の真前だった。何かあればすぐに博士のところに来るように、と言うことらしい。目の前は保也の、権博士の席。こちらも同様だった。


 部屋の中を見渡す。何人かいる職員はみんなパソコンに向かっている。彼らは天文部職員という、事務方の仕事を請け負っている人たちらしい。霊力が少ない人や、ほぼない人もいるという。保也がこっそり教えてくれたことだが、得業生より階級は下になる。


 十五階ということもあって、窓からの景色は絶景だった。荷物整理もそこそこにぼーっと外を眺めていると、ひょっこりと視界に保也が入って来る。


「大丈夫かえ?」

「あっ、大丈夫です。何かありましたか?」

「うん。ちょっとお願いしたいことがあって」


 凛々花が首を傾げると、それに合わせて保也も頭を揺らした。


「お使い、行ってきてくれるかえ?」

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