第18話「スーパー」

 晩御飯を食べ終え、俺は今日の課題を、そしてあーちゃんは今日も呑気にテレビを見て笑っていた。



「あーちゃんは課題とか出てないの? テレビばっかり見てて大丈夫?」

「え? 出てるけど?」


 ……いや、じゃあやらないと。

 何、さも当然なような顔して答えているのだろうかこの子は。


 すると、そんな俺の考えを先回りするように、あーちゃんは胸を張って宣言する。



「ふっふっふ、私を誰だと思っているのだい?」

「あーちゃん」

「そうじゃなくて、学校では何だい? ほれほれ」

「あー、うん。生徒会長だね」

「そう! 生徒会長様だよ!! そんなスペシャルな私が、課題ごときまだ片付けていないとでも思った!?」


 えっへんと胸を張り、見本のような百点満点のドヤ顔を浮かべるあーちゃん。



「もう自分で言っちゃうんだね。で、そんな生徒会長様は課題をどうしたの?」

「生徒会中に片付けた!!」


 俺の質問に、やっぱりドヤ顔で答えるあーちゃん。

 しかしそれは、所謂内職というやつではないだろうか。


 だが、またしても俺の考えを先読みしたあーちゃんは、ちっちっちと指を振りながら、やっぱりドヤ顔を浮かべる。



「スペシャルな私だよ? 生徒会の仕事を片付けた上で、他の皆が終わるまで課題をして待っていたのだよ!」


 あー、なるほど。

 であれば、それは素直に素晴らしい話だった。



「だから、ここへ来るまでに課題は全て終わらせているのだ!」

「流石あーちゃんだね、えらい」

「えへへ、知ってるぅー」

「うん、そんなあーちゃんが彼女で誇らしいよ」

「そ、そう? いやぁ、えへへ、それ程でもあるかなぁー」

「そうだね、だからそんな天才なあーちゃんに手伝って貰えたら、すっごく助かるんだけどなぁ」

「え? いいよ!! 私に任せてっ!!」


 俺のそんなお願いに、普段なら絶対嫌がるけれど、二つ返事でオッケーするあーちゃん。


 うん、チョロい。相変わらずチョロすぎるこの子。

 すっかりご満悦な様子のあーちゃんは、どこが分からないか全部聞いてと食い気味に顔をぐいっと近付けてくる。


 そんな顔を近付けてくるあーちゃんに、俺は集中しなければならないのに思わずドキドキしてしまう。

 やっぱり美少女で、こんな風に異性を意識をさせられる度、俺は内心いつもドキドキさせられているのであった。



「ん? かずくん?」

「あ、ああ、ごめん。じゃあ、早速ここなんだけどさ――」


 こうして、一人だともっと時間がかかっていたであろう課題も、あーちゃんのおかげですぐに片づける事が出来たのであった。



 ◇



「さぁかずくん! 課題は終わったよ! 今からは何の時間か分かる?」

「さぁ、何だろう」

「スーパーあーちゃんタイムだよ!!」


 両手を広げながら、謎の宣言をするあーちゃん。


 スーパーあーちゃんタイム? なんだそれ?



「普通に気になるね。ちょっと詳しく教えて貰ってもいいかな?」

「いいでしょう! かずくんにだけ与えられた、特別な時間なのです!」


 ほう、それはすごい。一体どんな特典があるのだろうか。

 そんな事を思っていると、いきなり抱きついてくるあーちゃん。



「特典その1! こうして私が抱きつきます!」


 なるほど、それは我が校全生徒が憧れる特典だなと、俺は確かにスーパーな時間だと納得する。



「これだけ?」

「違うよ! 特典その2!」

「その2?」


 そう言うとあーちゃんは、今度は自分の太もものところをポンポンと叩く。



「はい、かずくん膝枕してあげるよ」

「ひ、膝枕?」

「いいから、どーぞ!」


 早くしろとばかりに、俺の腕を引っ張るあーちゃん。

 その結果、俺はそのままあーちゃんに膝枕をして貰う形となる。


 ――なにこれ、恥ずかしい!!


 そして、いざこうして膝枕をされると、中々に恥ずかしいものがあった。

 頬からはあーちゃんの体温が感じられて、またあーちゃんからは甘い良い香りがする事で俺のドキドキを加速させる。



「どう? 嬉しい?」

「ま、まぁ……そうだね、嬉しいよ……」

「えへへ、かずくんは可愛いね」


 そう言って、俺の頭をよしよしと撫でだすあーちゃん。

 こうしている間は、やっぱりあーちゃんはお姉さんであり、包まれるような温もりを感じる。


 そしてそのまま、暫く俺はあーちゃんの膝枕を堪能させて貰ったのであった。



「スーパーあーちゃんタイム、恐るべしだね」

「そうでしょ? でも、まだ終わりじゃないんだなぁ」


 負けましたと俺が感想を告げると、なんとあーちゃんはまだ終わりじゃないという。

 これ以上何があるのだろうと、俺はもう素直に楽しみになっていた。


 するとあーちゃんは、何故か顔を真っ赤に染める。

 そして、俺の頭をよいしょと起こすと、二人向かい合って座る形となる。



「あ、あーちゃん?」

「……と、特典その3」

「うん、その3?」


 何だろうと俺が聞き返すと、いきなりあーちゃんはその顔を近付けてくる。

 そしてそのまま、そっとその柔らかい唇を俺の唇に重ねてくる――。



「……えへへ、最後はキスでおしまい!」


 すっと顔を離すと、そう言って恥ずかしそうに微笑むあーちゃん。

 その姿に、俺まで顔が熱くなってしまう。



「――じゃあ、そんなあーちゃんにお返ししないとだね」


 だから俺は、そう言って今度は俺からあーちゃんの唇に優しくキスをする。



「か、かずくん!?」

「いつもありがとね、大好きだよ」


 驚くあーちゃんに、俺は素直な気持ちを伝える。

 するとあーちゃんは、嬉しそうに満面の笑みを浮かべたかと思うと、そのまま両手を広げて抱きついてきた。



「私も大好きだよ! かずくん!!」


 こうして今日も一つ屋根の下、結局俺達はいちゃいちゃしながら過ごしているのであった。


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