納品とお説教……。
私たちは今、最初の依頼の帰路についたところだ。
というか、最初の依頼じゃん! これ!
初任務でこんなに振り回されたの……? 先が思いやられるなぁ……。
今でも右を向くと、
「ふふっ」
なーんて討伐の証明になるスライムの核が入った袋を抱えながらニコニコしてるルゥが腹立たしく思えてくる。
次からは鎖でもつなげておこうかな……。
これといって特に会話をするでもなく(口を開くと悪口しか出てこなさそうだったので)歩いていると、冒険者ギルドが見えてきた。
隣でニコニコしてるやつが足を引っ張った所為でもう日が傾いている。
早く宿を見つけないと……。
ギルドに入ると最初の時と同じようにすごいガンつけられる……。
本当にこれだけは慣れる気がしない……。
だってみんな見た目が怖いもん!
周りの視線に少し緊張して、フードを深くかぶりながら受付のお姉さんの方に進んでいくと、ルゥがいきなり、
「お姉さん! クエスト終わったよ!」
と周りの視線なんて気にも留めないで話しかけた。
こういうところだけは尊敬するよ。
⋄◇────────◇⋄
まぁ、いろいろあって今はすっかり夜になってしまったので宿屋にいる。
お金はもらった(盗んだ)分がまだまだたくさん残っているから全然余裕があるけど、これからのことを考えてロウタスで1番安い宿屋の一室を借りている。
もう気づいてると思うけど、ルゥと同じ部屋だ。
正直なところ、ルゥなら大丈夫かなって思ってたり……。
まぁ、バカだしアホだからアイツはそんなことに興味はないでしょって思ってるだけ。
今日は本当に疲れた。主にルゥの所為だけど。
さすがに眠かったのでその日は早く寝ることにした。
⋄◇───翌朝───◇⋄
「起きてー!!!!」
建物の外まで聞こえるような声がどこからか聞こえる。
「わぁ!?」
これにはたまらず私も飛び起きる。
「起きた?」
と爽やかな笑顔を向けてくる寝癖のついたルゥ。
昨日散々振り回しておいて強制的に叩き起こすとは……。
なるほどなるほど。
つまりお説教が必要なようで。
⋄◇───3時間後───◇ ⋄
今は市場にリリウム村の村長の屋敷で沢山もらった(盗んだ)食糧を売りに行く道中だ。
馬小屋から出してきた馬車にルゥと2人てのっている。
もちろん、荷台には大量の食糧。といっても、ほとんどが果物。
横目でチラッとルゥを見ると、ルゥが小さく丸まって体育座りしている。
それだけ説教が怖かったみたい。
これならしばらくは大丈夫……かな?
そんなことを考えているうちに市場に着いた。
無事到着したのはいいけど、市場なんて初めて来たから何をどうすればいいかわからないぞ?
どうしたらいいのかわからず、とりあえず作業をしていた小太りのおじさんに話しかける。
「あの、すみません」
すると、おじさんが作業の手を止めて、
「なんだい嬢ちゃん。もしかして、ここは初めてかい?」
と訊ねてくる。
おぉ。話が早くて助かる!
「そうなんですよ。だからどうすればいいのかわからなくて……」
「ならちょうどいい。俺が鑑定して納品してやるよ。ちょっと見せな」
そういっておじさんは馬車の方へ行く。
未だにルゥは丸くなった状態で馬車にいる。
そこまでくるともう可愛いよ……。
そんなこんなで無事納品が終わり、今日もまた、2人は冒険をするためにギルドへと歩みを進めた……。
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