黒い水晶玉……。

              ⋄◇4日後◇⋄


 私たちは冒険者を始めるのにうってつけと言われている、そこそこ大きな街「ロウタス」にいる。


 馬車に長いこと座っていた所為かお尻が痛い……。


 冒険者を始めるのにうってつけと言われている理由は、近くの森や洞窟には、初心者でも倒しやすく、売るとそれなりのお金になる魔物が多いからだそう。


 私は腕にはそれなりに自信があるから、なにかと自由な冒険者をして、お金を稼ぎながら旅をしようと思っている。


 ついでに、ルゥを冒険者にして自分で稼げるようになったら、お別れしようとしていたり。


 冒険者の道は厳しいが、そこしか元奴隷が働ける職業を思いつかなかった。


 街の門をくぐったらすぐに有料の馬小屋があったのでそこで馬を2頭と、荷台も預けることができるようなので荷台も預けた。


 お金については、リリウム村の村長の屋敷からお金を沢山もらった(盗んだ)のでしばらくは大丈夫かな。


 馬車を預け終わった私は早速、冒険者の登録をするために冒険者ギルドに行こうと思って、

「あの、冒険者ギルドってどこにありますか?」

 と、こんな風に街を歩ているロウタス出身らしきおばあさんに訊くと、

「あぁ。それならそこの角を曲がればすぐだよ。とにかく大きいから一目でわかると思うよ」

 と親切に答えてくれた。


 結構近くにあるらしい。


 おばあさんに言われたとおりに道の突き当りの角を曲がる。

すると、大きな洋式の館っぽい建物が見えてきた。


 え、なにこれ別荘?

もっと小さくて野蛮な感じがする建物を想像してたんだけど……。


「でっかい……」

 つい、心の声が漏れてしまった。

これでは田舎者だと思われてしまうではないか。


間違ってないけど……。


 ふと隣にいるルゥを見ると、とてもワクワクしているようなまなざしでギルドを見ていた。


「早く行こ!」

「え、ちょっと!」

 ルゥが私の手を強引に引っ張ってギルドに入った。



――ギルドの中は筋肉モリモリの男しかいなかった。


 入った瞬間に男たちから睨まれたが、変な騒ぎは起こしたくないので私はマントについているフードを深くかぶって下を向いて目を合わせないようにした。


 ただ、心配なことが1つ……

「ルゥ、頼むから余計なことはしないでよね」

 そう小声でルゥに言うと、


「わかってるってー」

 へらへらした声で言ってきた。


わかってないな……。


「はぁ……」

 少し大きめのため息をついてから、カウンターに座っている金髪ショートの受付のお姉さんに、

「すみません、冒険者の登録をしたいのですが」

 そういうと、

「かしこまりました。お2人の登録ですね。では、こちらに個人情報をお書きください」

 と丁寧に案内してくれた。


 個人情報と言っても書く欄には名前と得意な武器、得意な魔法属性ぐらいしかなかった。


 本当に実力が全てなんだと思う。


 書き終えて、書類を返すと、同じタイミングでルゥも書き終えたようで書類を返した。


 ちなみに私は得意な武器は「剣」魔法属性は「闇」と書いた。


 すると、お姉さんが、

「カトレアさんと、ルゥさんですね」

 と言うと、続けて、

「では、さっそく試験を行います。こちらの水晶玉に手をかざすと魔力の量に応じて色が変わります。その色をもとに、ランクをつけさせていただきます。1番上がAランクで、1番下が、Fランクです」

 と説明してくれた。


 すると、ルゥが、

「平均はどのくらいなんですか?」

 と尋ねた。


 それは私も気になっていた。


「平均はD~Cランクですね。Bランクは時々見ますが、Aランクなんて見たことありませんね」

 と答えてくれた。


「では、どうぞ」

 とお姉さんが言うと、ルゥがサッっと素早く手をかざした。


やりたかったのだろう。


その後、水晶玉が青く光りだす。

「お姉さん、俺のランク何?」

 と高揚しながらルゥが訊いた。

「ランクCですね」

 お姉さんが笑顔を向けながら言う。

「平均か……」

 一気にルゥの声のトーンが下がった。


 何を期待していたのか……。

平均未満じゃないだけいいじゃないか。


 ルゥが終わったので次は私の番だ。

「次は私ね」

 実を言うと、私もやってみたかった。


 水晶玉に手をかざすと、黒く光りだした。


 すると、ギルド内がざわつき始めた。


「私のランクは?」

 と、お姉さんに訊くと、まるで聞こえていないように、完全にスルーしながら、カウンターの向こう側の引き出しから紙を1枚取り出し、


「え?」

 黒く光る水晶玉を見てお姉さんが一言。

「え?」

 手をかざしている私を見てお姉さんが一言。


流石に心配になって、

「あのー、黒く光ると何かまずいんですか?」

 と訊くと

「ええぇぇぇぇぇぇ⁉」

 と、私を見たまま後ろにのけぞり大きな声を出していた。


 おい、無視すんなや。


「あの……」

 と、私が言うと、ようやく我に返ったようで、

「あ、あぁ、失礼しました」

 と頭を下げた。


「えーっと……ランクなんですが……」

 言いずらそうにしながら、少し間をおいて、

「測定……不能です」

「え?」

 わけのわからないことを言い出してきたので変な声を出してしまった。


「黒色なんてマニュアルに書いてなくて……」

 と申し訳なさそうに言った。


「この場合、どうなるんですか?」

 私が聞くと、

「測定不能ですので、最低ランクのFからスタートとなります。ですが、ご安心ください。きちんと上には測定不能と伝えておきますので、評価に悪影響はないようにします」


わかってるよ……。

わかってるけどさぁ……。


後ろで今にも嫌味を言ってきそうなルゥのニヤニヤした視線がやだ……。

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