第35話 初回ログインボーナス
そんな事を気にするものが今までいなかったのだろう。野田は笑う。
「まぁ、郷田が気ぃ使ってお前を連れてきたことには感謝してるよ。話せてスッキリした」
それでこの話は終わりになるのだろう。玄関扉が開く音がした。コンビニから郷田が帰ってきたのだろう。戻ってきた郷田はコーラを袋から出して示す。
「買ってきたぞ。話は終わったよな?」
「終わった終わった。そこの棚に財布あるから俺の分は金とっといて。あ、桂木の分もな」
「俺の分はおごりじゃねーのかよ」
「初回ログインボーナスみたいなもんだよ。郷田には前にケーキ食わせただろ」
足の悪い野田の代わりに郷田が文句を言いながらも動く。桂木はここまで来て話を聞いてくれた事に感謝してるのか、コーラをおごってもらえたようだ。それは友達と認めてくれたということかもしれない。
「野田君、ありがとう」
桂木は素直な気持ちから感謝の言葉を述べた。
友達ができた。目立たないために作った友達ではなく自然に、自分に似ていると思えるような相手と。その感覚は桂木にとってなつかしいものだった。
きっと何もかも諦めてしまった者同士、気持ちがわかってしまうのだろう。
■■■
それから三人はコーラを飲みながら他愛もない話をして、それを飲み終える頃に解散する事になった。郷田と桂木は家が近いらしい。そうなると別々に帰る理由はなくなってしまう。
郷田は思っていた程嫌な奴ではないということは桂木もよくわかったが、それでも目立つ相手とは一緒にいたくない。無口でいようとする桂木に対し、郷田は積極的に話しかける。
「桂木さぁ、話どこまで聞いた?」
「全部だよ。野田君側の話、全部」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます