第34話 へんなとこ気にする奴
桂木はつい探偵みたいな事を言ってしまい反省した。普通の中学生はそんな事を気にしない。慌てて桂木は中学生らしい言葉をかける。
「でも、花火コンビ解散って言ったって人気者の女の子なんだから解散したってうまくやるでしょ。変にクレーム対応した先生も悪いし、煽るやつもどうかしてるっていうか。野田君だけが原因ってわけじゃないと思う」
「でも、オレはその後に何者かの襲撃にあって足の骨を折った」
桂木ははっと彼の右足のギプスを見た。この怪我は、その暴言と関係があったものだった。
「教室でも部活でもハブられまくって、一人で帰っていたところを何者かに襲われたんだ。頭に何か袋みたいなのをかぶせられて、教室まで引きずられて、そこからぼこぼこにされて」
「それは、誰に?」
「袋かぶせられたから見えてないし、誰も何も喋らなかった。上履きの色で三年生だってことしかわかってない。まぁ、多分この学校にいる女子の彼氏とか、本来花火コンビと一緒のクラスになるはずだった一組のやつとか、ダメな正義感を発揮したやつだろ。心当たりが多すぎてわかんね」
野田は体格が郷田ほどではないが手足が長くしっかりしている。彼に力で勝ったのなら複数の男子生徒である事は確実なのだろう。しかし被害者ですらその姿は一人も見ていない。
計画的に、誰がやったかもわからないよう襲撃したのだろう。
「警察には言ったの?」
「その前に学校に言っちゃったからな。学校って警察入れるの嫌がるらしくて。訴えてもいいけど協力はしないってさ。そもそもオレすら見てない犯人を見つけるのって難しいだろ」
「でも警察なら何か証拠は見つけられるんじゃないかな?」
「……なんかさ、どうでもよくなったんだよ。足は折れて、陸上の推薦も駄目そうで、学校は敵ばっかだし。偶然そうなったならまだしも、そうなったのは全部オレの発言きっかけなわけだし」
自分が悪い。そういう思いから野田は解決する事を諦めてしまった。今でさえ生きるのを諦めているような顔だ。その時も今も、事件の解決を諦めている。
「もう学校にはいかない。受験だって対策練り直さなきゃなんねえし、母親だって保護者の活動させるのは可哀想だ」
「でも、郷田君は」
「郷田もな、あいついいやつだけどオレを擁護したせいで責められちゃ悪いよ。桂木も、オレの事はもう気にすんな。騒ぎの原因が不登校になって終わり。それが一番きれいな終わり方だよ」
「……きれいに終わってなんかいないよ。襲撃犯が今も野放しにされてる」
「やっぱりへんなとこ気にするんだな、お前」
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