第28話 自分勝手な探偵

「グッチーといえばさ、何人かクラス以外の人がいるみたいなんだよね」

「匿名なのにわかるの?」

「クイズした時『イヒ』とおでんの具材が続いたでしょ。あれに『何これ』って言った人がクラス外の人。何人かいるみたい」


桂木はあの書き込みを思い出す。確かに『イヒ』が続ければその様子は異様だ。クイズだと知らなければつい『何これ』と返してしまう。それは三年三組の生徒ではないというのが花咲の考えだ。

ふむ、と桂木はさらに考える。


「学外……いや、噂を聞きつけたよそのクラスのやつって可能性もありそうだな。昼休みなわけだし」

「だよね! 桂木君、それが誰かわかる?」

「わからないし、わかったってどうしようもない」


探偵らしい桂木の推理に、花咲は一時盛り上がるも桂木にやる気はないままだ。多分彼は自分に被害が被らない限り、動くつもりはない。財布の事件の時は解決しないと帰れないから。偽探偵の事件は自分を名乗る痛々しい偽物が現れたから。クラス外のグッチー利用者について、知っても知らなくても桂木はなにもかわらない。ならばなにもしないだろう。本人はうっかり気になっていたようだが。


「……わかった。見えない探偵が活躍するのは事件があった時だもんね」

「事件があったって解決しないかもしれないよ。見えない探偵は自分勝手なやつなんだから」


まるで他人事のように桂木は言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る