第23話 もう現れない
桂木と花咲はわかっているがヒヤリとした。やはり探偵について記憶し探ろうとする者はいる。下手に目立つわけにはいかない桂木は書き込むべきではないと悟った。
「そういえば、探偵猫って何? その探偵の偽物だって事はわかるんだけど」
「変な偽物だよ。皆が探偵のことすごいすごい言うから便乗してるやつ」
「あいつマジで痛いな。この間も女子のフリして自分を持ち上げてなかった?」
「あんな子供だまし、騙される奴なんていないでしょ。相手するだけ無駄だから放置しとこ」
そして生徒達は探偵猫の正体は少ししか探らず、このまま放置する事にしたらしい。思っていたよりクラスメイト達はインターネットに慣れていたし人間ができていた。もっと早くこんな言葉をあちらこちらで聞いていれば、こんなクイズはしかけずにすんだというのに。
しかしクラスでここまで言われれば二度と探偵猫はグッチー内に現れないだろう。
「じゃあこの探偵っぽい人が正解だから。三日以内に私に話しかけてね。IDで本人確認して賞品渡すから」
花咲は一瞬だけ桂木に視線を送りそう言う。それと同時に桂木のスマホへメッセージが届く。
『放課後図書室に来てね。ちゃんと人目を避けて待ってるからさ』
桂木はため息をつく。問題は一つ解決したものの、また一つ増えた。
ゲームを終えたクラス内もいつも通り昼食をとる流れとなる。いつものようにパン片手に田中は桂木のもとへとやってきた。しかしその顔は見るからに気落ちしている。
「た、探偵、本当にいるんだね」
そしてつぶやく。それは以前の会話の流れとは違うものだ。探偵は俺だと彼は言ったはずなのに。
「あの、こないだのは嘘なんだ。俺が探偵ってやつ。桂木、誰かに話したりした?」
「ううん」
「そうなんだ。お、俺、あれくらいの推理俺だってできると思ってて、さ」
「うん」
「だから俺が探偵だって言っただけで、本当は違うから。探偵猫でもないから」
どうやら田中は口止めと言い訳をしたいらしい。もしかしたら桂木が言いふらすのではないかと心配して。
そして彼は探偵でもないし、探偵猫である事も否定する。探偵猫である事を否定したのはクラスの反応を知ってしまったからだ。皆に幼い子供でも見るような目で見られていて、それを良しとする程彼は幼稚ではなかった。
そして探偵すら否定したのはなりすますことを諦めたからだろう。また今回のように、自分には解けない謎を解かれて違いを見せつけられるかもしれない。そう判断し、探偵となることはあきらめたのだった。
「僕、転校したばかりだから友達がいないよ。例え何かを知っても、話す相手がいないんだ」
桂木はしれっと嘘をついた。彼は早速田中の事を花咲にバラしている。
しかしそれを言うわけにはいかないし、今ここで必要なのは余計な事は話さないと証明する事だ。せっかく田中が自ら判断し行動を改めたというのに、台無しにはしたくない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます